放射能についての基本的な事実

2012年03月08日 10:41

きのうから江川紹子氏が「福島の女性は子供を産めない」と思い込む放射脳にからまれているようだ。彼女は私のようにブロックしないで丁寧につきあっているので、TLを見ていると、震災から1年たっても初歩的な科学的事実が理解されていないことがわかる。そこで拙著でも書いたことだが、基本的な事実を簡単に復習しておこう。

  • 子供に放射線障害が遺伝することはありえない:放射線によって母親のDNAが損傷したとしても、それは個体変異なので子供には遺伝しない。妊婦が被曝した場合のリスクも、統計的には通常と同じだ。広島・長崎の被曝二世にも、遺伝的な障害の増加はみられない。

  • 被曝リスクはわかっている:「低線量被曝のリスクはわからないから1mSvでも危ない」というのは間違いである。癌死亡率は100mSv以上ではほぼ線形に増加するが、それ以下では統計的に検出できないほど小さいだけで、上限値は0.5%である。これは受動喫煙と同じぐらいで、放射線のリスクは喫煙よりはるかに小さい。
  • 福島の被曝リスクは無視できる:原爆によって瞬間的に100mSvの放射線を浴びたときの発癌リスクは0.5%だが、同じ線量を1年間にわたって浴びることによる健康被害は世界中に一例もない。食塩を365g一挙に飲むと死ぬが、毎日1g摂取しても何も起こらないのと同じだ。福島の線量は最大でも毎時数十μSvなので、健康被害は考えられない。
  • 内部被曝のリスクも問題にならない河野太郎氏も指摘するように、内部被曝の預託線量は体内に残留する期間の累積値なので外部被曝と同じであり、「内部被曝は外部被曝より恐い」というのは迷信である。福島県の内部被曝データでも99.8%以上は生涯の預託線量が1mSv未満で、問題にならない。
  • 過剰な避難は被害を拡大する:チェルノブイリ事故についてのロシア政府の報告書によれば、直接の死者は消防作業員など数十人だったが、35万人を強制移住させたために数千人の精神疾患や自殺者が出た。福島でも、原発事故で避難した高齢者が100人以上死亡したと伝えられ、過剰防護による二次被害のほうがはるかに深刻だ。
  • 最悪のエネルギーは石炭火力であるWSJも指摘するように、アメリカは原発の新規建設をやめて石炭火力を増やし、大気汚染が悪化した。アメリカでは大気汚染で毎年2万人以上が死んでいるともいわれ、炭鉱事故でも世界で毎年1万人以上死んでいる。石炭火力から出る放射性廃棄物の量は、同じ出力の原発よりはるかに多い。

以上のような事実は専門家の常識であり、政治家も官僚も知っているが、「世論」の攻撃を恐れて瓦礫の受け入れさえできない。被害を拡大している加害者は、放射能の恐怖をあおっているメディアと、国民を論理的に説得できない政治家である。今こそ民主党政権のリーダーシップが問われている。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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