大学生はなぜ勉強しないのか

2012年03月09日 05:43

「大学生に勉強させよ…対策の大学に財政優遇案」 によると、 中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)は、日本の大学生は国際比較でも勉強時間が短いとされ、大学教育部会は、「日本の学生が主体的に勉強する時間は1日に講義を含めて4・6時間」とするデータをもとに、「必要時間の半分程度」と分析、国として大学生をもっと勉強させるように尻をたたく、という素案をまとめたようです。

大学生の勉強時間が短いことは、確かなことですが、なぜ大学生は勉強しないのでしょうか。 これを分析しないで、ただもっと勉強しろといっても効果はないでしょう。


何のために勉強するのか分からない

これが一番大きな要因でしょう。大学に入学したものの、何に使うのかはっきりせず、習得にかなりの努力を要するものを勉強するのに、抵抗を感じる学生も少なくないようです。 つまり、学生は費用対効果を考えながら勉強するので、効果のはっきりしないものには投資しないということです。学生にとって卒業が最大の目標というケースも多く、こうした場合、最小の努力で単位を取得することが、スマートな勉強の仕方になっているわけです。  

しかし、「大学は何を教育するところか」  で述べたように、大学の教育の目的は、頭の使い方(学習能力)を身につけることであって、すぐに役に立つことを勉強することが望ましいわけではありません。また、大学が企業の要請に沿った教育をするとしても、基礎をしっかり固めることでしか要請には応えられないでしょう。 

大学の授業と高校の授業の違い

大学生が勉強しないもう一つの要因は、高校と大学では勉強の仕方が違い、その接続が上手く行っていないことにあると思われます。 そして、その原因は、大学の授業が高校の授業と全く異なる密度を持っていることにあります。

数学を例にとると、理工系の1年生が習う線形代数の教科書は、大体200ページほどです。これは、高校の数学の教科書の約2倍の厚さです。これだけの内容を週1回、90分の授業で通常1年、短い場合は半年で教えるわけです。一方、高校の教科書の内容を簡単にパワーポイントを使って講義するだけなら一学年分を90分5回の講義で済ませることが可能でしょう。 大学の授業の密度は非常に高いのです。 

その一方、高校の数学の授業は、授業時間は一回、50分ほどですが、週に4-5回もあり、さらに家庭学習や予備校に通ってさらに勉強しているわけです。 少ない内容に比較して多大な時間を投資しているから、様々なパターンの解法を記憶し、受験に合格するだけの得点が可能なわけです。 

従って、大学に入った途端に、今までやってきた解法をパターン化して当てはめて解答するといった方法が、通用しなくなるわけです。 これが大学に入学した途端に、授業が分からなくなるという理由でしょう。大学の授業は、主体的に考えないと理解できないのです。

ここに高校と大学のギャップがあり、これが、学習意欲を減退させる要因になっていると思われます。 

授業時間を含めて一日4.6時間しか勉強していないということは、ほとんど自宅学習をしていない状態なのですから、基礎教育が定着しないというのは当たり前です。 

それではどうすればよいか

まず、高校と大学の学習の仕方に大きなギャップがあるのが問題なので、高校の段階で、パターンを記憶するような学習から脱却する必要があります。そのために大学入試は、論述式の入試問題中心にすることが求められるでしょう。 もちろん中学、高校の教え方にも工夫が必要でしょう。   

次に、大学生の意識を高めるために、大学基礎教育の単位認定を厳格にすべきでしょう。現状は、入学した学生は、ほとんど卒業するという状態ですが、これを改める必要があるでしょう(私の偏見かも知れませんが、文系の先生方は単位認定や成績評価が、非常に甘いように思われます)。 

大学の基礎教育において、その重要性を説く努力もしなくてはなりません。  

確かに、大学での勉強は、世に出て直接役立つことは少ないでしょうが、世の中よくしたもので、卒業生のその後を見ると、その学習能力が如何に大事かを観察できるものです。 大学生の皆さんには、その在学中にしっかり勉強して、思考力の足腰を鍛えて頂きたいと思います。 

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