電波政策最大の問題は護送船団

2012年03月12日 09:00

900MHz帯での免許取得について松本徹三さんの記事を拝見した。記事はもちろん個人の意見であるが、ソフトバンク社内の事情をうかがわせるに十分なものだった。孫正義氏は国士ではなく策士に過ぎなかったのだという印象も持った。

池田信夫さんのコメントにもあったように、僕もソフトバンクに免許が出たのはおかしいと言っているわけではない。決定プロセスが不透明で、それが国民に不利益をもたらしているのが問題なのである。

松本さんは次のように書いている。

何を言いたいかと言えば、通信政策(電波政策を含む)には、レセ・フェール政策はあり得ず、何らかの「政策的配慮に基づく人工的な競争促進策」がとられるのが普通だという事だ。強い事業者が自然の摂理通りに雪だるま式に更に強くなることを防ぐ為に、「非対称規制」を随時導入し、少しでも競争会社同士の市場シェアが近づくように配慮している例は枚挙に尽きない。

だから、「今回は三番手に免許を与えよう」「次は、それ以外の三社の番だ」と裁量で行政してもよいというのが、松本さんの意見である。本当にそうだろうか。通信市場への競争導入期にはともかく、1990年代からは、電波オークションを導入するなどして市場原理に基づく競争促進に各国は動いている。わが国はその流れから取り残されているのだ。

松本さんは「不必要な議論は総務省の仕事を遅らせる事にもなりかねないと危惧」したので発言を避けたと書いている。そのように、業界は裁量権を握る電波部に配慮する。護送船団の船長の意向には決して逆らわない。

その結果、700MHz帯のど真ん中にITSを居座らせるというような周波数利用計画がいつまでも続く。このITSは他国では使われる可能性が全くないガラパゴス計画で、「本当はやりたくない」と僕に話してきた企業が何社もある。しかし、彼らは公開の場では発言しない。テレビ帯ホワイトスペースの利用についても同様だ。電波部はエリアワンセグで覆い尽くそうとしているが、アメリカではWiFiへの活用が進んでいる。スマートフォンの普及と電波資源のひっ迫への対応としては、アメリカの方が正しい。しかし、わが国の電波産業からは声が聞こえてこない。

その結果何が起きるのだろうか。利用者は、通信への割当てが少ないために、混雑し低速なサービスを利用しなければならない。通信サービス料金も割高なままだ(このことは、総務省自身の調査で指摘されている)。日本企業が作る700MHz帯ITSやエリアワンセグには輸出可能性がないので、産業競争力にも資することはない。

電波オークションを導入するのは、国民経済への悪影響を取り除くためなのだ。

山田肇 -東洋大学経済学部-

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