誤った科学的主張に惑わされないために

2012年03月14日 12:07

世の中に溢れる情報は、正しいものもあれば、誤ったものもあります。情報化の進んだ今、情報の正しさを正確に判断することは、我々にとって極めて重要だと言えるでしょう。

ここでは、科学的主張を含む文章に的を絞り、その論理の繋がりを点検することで、誤りを見つける方法について、例を挙げながら解説したいと思います。

なお今日の別記事:「一見科学的に見える誤った情報に騙されないために」 と内容は被りますが、GEPR自身のチェック機能が十分でないようなので、私の記事も無意味ではないでしょう。 


非論理的文章の一例

ここでは、昨日アゴラに掲載された伊藤公紀教授の記事:

「原発再考-リスクやコスト、温暖化問題の視点から」

を取り上げましょう。 この記事は論理的ではありません。 

ここで、伊藤教授は、地球温暖化には多くの要因が働いている可能性を指摘し、ご自身が研究されている、太陽活動が温暖化の要因になっている可能性について言及されています。 しかし、この研究は現在も研究中のもののようであり、ここで言及されている研究も、また引用されているグラフも、伊藤先生が共著者の2007年出版の「暴走する「地球温暖化」論」のp.135で説明されているものと、ほとんど同じようです(太陽活動の変動が、地球の気候に影響を与えるという説は、古くからあります)。伊藤先生は、ここで、(まだ研究中の)太陽活動が温暖化の原因になっている可能性について述べているだけであり、主張も

しかし私は太陽の影響を考えて、解析し直さなければならないと考えている。

のように可能性も否定できないといった言い方になっています。

ところが、そう言っておきながら、突然、

温暖化がCO2によるものというのは誤りではないにしても、影響の一部にすぎない可能性が高いだろう

と主張されるわけです(まあ大部分も一部と解釈できなくはないですが)。 ここに大きな論理の飛躍があります。

またグラフや図に惑わされないことも大事です。 グラフや図は、視覚化することで、理解を助ける働きがありますが、グラフや図は、そのインパクトが強いために、我々は惑わされ勝ちになります。 このことには十分注意しなくてはなりません。

例えば伊藤先生の記事では、河川に見立てた温暖化の原因が多岐にわたると思わせる図が登場します。 こういった図が登場すると、CO2の影響が主因のようでないようにも見えます。 しかし 

ある現象の要因の候補が、多数あるからといって、その特定の一つの要因の寄与が小さいとは言えない。

ということに注意しなくてはなりません。 当たり前のことですが、現象には通常、様々な要因があり、その中でどれが大きく効いているのか、評価をしなくては、特定の要因の寄与が小さいとは言えないわけです。

この評価に全く言及せずに、

結局、現実の気候変動では、自然変動やCO2以外の人為的要因が多く、CO2を削減しても気候変動は止まらない。従って、CO2しか見ない気候変動対策は無意味である。もはや、原発の存在理由にCO2削減による気候変動抑制を掲げることはできない

とか

原発とCO2による温暖化いう二大幻想を克服することは、将来を開くために必須である

のような発言をされるとは、驚きです。 とても論理的とは言えないでしょう。

因みに、私は、気温変動のうち、短期的な気温変動については宇宙線強度変化と相関は高いが、地球温暖化とされる長期間の気温の直線的増加傾向は宇宙線強度変化と相関が低いという考え方に賛成です。その大きな理由は、宇宙線強度変化に直線的な変化傾向が観察されていないからです。

どんな主張でも作り出せる

実は、科学では、査読付きの専門誌に載せる論文でなければ、どんなに誤った主張であっても、その主張を支持する材料だけを集めれば、一見、その主張が正しいかのように見せることは可能です。 

その一例として温暖化、太陽活動原因説を主張する「不都合な真実:温暖化の原因は二酸化炭素ではない」 を取り上げましょう。

この文章の中で、

カークビー氏は1998年に初めてこの理論を説明した時、宇宙線が「今世紀我々が経験している地球温暖化のほぼ半分から全ての原因となり得るだろう」と語った。

というところが大事です。 つまり、この記事を遡ること13年も前の談話を持ち出しているわけです。 しかも、この記事が書かれた時点で、Svensmarkによる、太陽活動が温暖化の要因であるという説については、多くの反証が得られています: 

●「地球温暖化の原因は太陽の活動」説を否定する論文
 http://wiredvision.jp/news/200707/2007070922.html
 http://wiredvision.jp/news/200707/2007070922.html
●Study: Cosmic rays do not explain global warming
 http://www.cicero.uio.no/webnews/index_e.aspx?id=11074
●More doubt on cosmic climate link
 http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/7352667.stm

これから分かることは、この記事は、フェアなものではなく、非常にバイアスの掛かったものだということです。

まとめ

このように現在、情報化により、多くの情報に接することができるわけですが、その取捨選択には十分、注意することが必要であり、そのために我々は、十分な知識と、論理を丹念に辿る能力を身につけておく必要があるのです。

注意: 私はCO2が温暖化の主因と考えていますが、それに固執するつもりはなく、きちんとした根拠のある、別の原因があるなら、それを受け入れるつもりです。 念のため。

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