暇つぶし×自動車産業

古川 賢太郎

池田信夫氏の「暇つぶしという重要な問題 – 『暇と退屈の倫理学』」という書評を読んで、これを既存の産業で考えてみるとどうなるだろう?とひと月ほど考えていた。つまり、「暇つぶし×○○産業」で何が考えられるか?ということだ。そこで、今回は「暇つぶし×自動車産業」について考えてみた。


いきなり自動車産業を考えるのではなく、既存の「暇つぶし産業/商品」を少し眺めてみる。取り上げるのは「iPhone」だ。iPhoneがなんで暇つぶしなんだと言われるかもしれない。あんなに便利で役に立つツールはない!と。しかし、ビジネスシーンでどれほど使われているだろうか?iPhoneはシンプルな商品故に外部デバイスとの組み合わせ、Appsの導入でどんなツールにも変わる。しかし、アプリランキングを見ても上位にビジネス向けのアプリがくる事はない。

上位にビジネスアプリが来ないという事実はiPhoneが如何に暇つぶしに使われているかということだ。ジョブスは「人生を豊かにする」と言った。池田氏の書評によれば、 物質的に満たされた人にとって暇つぶしこそが人生の意味となるわけだから、人生を豊かにするとは「有用な暇つぶしの道具を提供する」ということに他ならない。すると、暇つぶしのヒントを得るのにiPhoneを参考にするのは意味がある。

iPhoneはシンプルな商品である。そして、外部接続やアプリ導入によって最高の暇つぶしデバイスになっていく。これを自動車に適用すると、自動車自体をシンプルで、しかしながらスタイリッシュな商品にするという考え方だ。そして、部品をユニット化して交換や増設が簡単に出来る様にするということだ。

これは部品の交換や増設を容易にして、サードパーティーも含めた商品の流通を促すのだ。ステアリングはもちろん、エンジンの部品やドア、ボンネットに至るまで交換可能にする。自動車メーカーも自社が提供する部品も当然発売するとして、サードパーティーが提供する部品も動作テストなどをしてメーカー保証をつけて販売を許可し、その代わりロイヤリティを得るといったことが出来る。

車種はシンプルに5~多くても10車種程度。部品交換によって外観も替えられる訳だから、そんなに車種は必要ない。部品の交換はユーザが自分で出来るものがほとんどで、工具や設備が必要な場合は提携のガソリンスタンドや自動車部品販売店などで自分でやることも出来る様にする。部品をはじめとした周辺サービス市場が生まれる可能性もあるだろう。

自動車のカスタマイズ市場は以前からあるが、いずれも数十万とか数百万と高額なもの。これはちょっと小金と暇ができたひとが踏み込むには高すぎる。だから、せいぜい数万円でカスタマイズ可能にすることによってもっと自動車を楽しもうという人も出てくる。自動車本体も仕様をシンプルにすることで安くする。

今や自動車が人生で二番目に高い買い物にならない時代になったと世界を変えることが出来るのではないだろうか。

古川賢太郎
ブログ:賢太郎の物書き修行