橋下大阪市長への期待と不安

2012年03月24日 06:00

橋下大阪市長が、国政進出を目指す大阪維新の会を立ち上げ、注目されています。 現在の決められない政治から脱却し、日本の政治を根底から変えてくれるかもしれない、そういった期待が持たれているようです。  

しかし、本当に橋下氏に期待してよいのでしょうか。 私は、期待する気持ちもありますが、大いに疑念も持っています。 

端的に言えば、橋下氏や大阪維新の会が、市民や国民に正直に負担増をお願いできるのだろうか、という疑問です。

 


橋下流劇場型政治

橋下氏は、常に誰かとケンカをし、それが報じられることで世間の耳目を集めています。

例えば、最近、物議を醸している卒業式に於ける君が代斉唱問題や労働組合への攻撃などが物議を醸していますが、これはそんなに大事なことではないでしょう。 また橋下氏は、脱原発を主張しているようですが、それが企業や家庭の負担増を招くことに意識は行っているのでしょうか。 

私には矢継ぎ早に繰り出される、こういった大立ち回りが、市政にとって重要なものであるとは、とても思えないのです。 

よく観察してみれば、橋下氏のケンカは、市民受け、国民受けのよいものに限定されており、橋下氏は実は空疎なポピュリストであるかもしれない、という疑念を私に抱かせています。 

バス運転手の給与引き下げ

橋下市政の人気政策の目玉といえるのが、市営バス運転手の給与削減でしょう。 橋下市長は、市営バスの運転手の給料を4割も減らす方針のようです(「関連記事」 )。 現実に4割下げるかはともかく、これだけドラスティックに下げようというのは、市政のリストラとして評価する人は多いでしょうし、ひいては橋下氏が、維新八策で主張するように、道州制など現行のシステムとは違った、政治、行政のシステムを導入することで、効率化を実現し、国民負担増を伴うことなく、財政再建をしてくれるのではないか、と思われる向きもあるでしょう。

しかし、これからお話するように、政治、行政のガラガラポンで、国民負担増を回避することは、数字の上から不可能なのです。 

政治、行政のガラガラポンでは財源は出てこない

さて、政府のリストラでどれだけの財源が期待できるのか、簡単のため、人件費に絞って、少し検討してみましょう。平成22年度の国家公務員数は56.4万人、人件費総額5兆1795億円、一人当たり918万円ほど、地方公務員はというと235万人、21.6兆円、一人当たり913万円です。 随分高いと思われる方も多いでしょうが、一人当たり人件費には、所謂、健康保険料や年金などの雇用者負担(労使折半といういうやつです)や、退職者に対する諸手当を含んだもので、一人当たりの給与となると、そのおよそ3分の2程度です。 正規雇用の国家公務員の場合、22年度で、 年間634万円ほどです。公務員の給与って要するに平均6-700万円ということです。 2割削減したところで、5兆円程度の財源(消費税にしておよそ2%分)が出てくるだけです。 一部の経済評論家の方がシロアリ退治が先だ「シロアリ退治なき消費増税阻止に妥協余地なし」 、などと言っていますが、公務員の給与が高いということはなく、 多少の引き下げはあっても、2割も給与を下げる正当性はないでしょう。 財源としてはナンセンスに近いものです。

また、よく批判される天下りにしても、年に5-600人程度であり、財源としては問題になりませんし、同じく、議員定数削減というのも財源にはほとんどなりません。 

このように、ガラガラポンで、巨額の財源が見つかる可能性は限りなくゼロに近いのです。事実、政府のリストラ(事業仕分けなど)で財源は見つかるとした、民主党の公約がどうなったか、これは皆の知るところでしょう。

こういった、官僚組織や、公務員をバッシングすることで、国民受けを狙うやり方は、政治家や経済評論家の常套手段ですが、冷静に数字を計算してみれば、国民の溜飲を下げることにはなっても、必要な財源とは桁違いに小さな財源しか出てきません。 確かに、政府にはまだ無駄はあるでしょう。 しかし、無駄のない政府は世界にあるのでしょうか。 無駄の削減は重要ですが、増税を先延ばしするために、無駄の削減が叫ばれていないでしょうか。 国民は冷静に計算をし、こういった目くらましに惑わされないようにしなくてはなりません。 無駄の削減で巨額の財源が出てくるというのは、インチキなのですから。

消費税30%程度は必要

結局、野口悠紀雄、早稲田大学教授など、多くの経済学者が試算しているように、消費税を30%程度に上げ、社会保障を削減しないことには、財政破綻は避けられないでしょう(「小黒先生の関連記事」 )。 そして増税を先送りすれば、するほど、大幅な増税が必要になるのです。

その上、仮に財政破綻が起きたとしても、金融システムの破壊により、多くの企業が倒産するだけではなく、破綻後も少子高齢化には違いなく、財政破綻で国民負担が一挙に減少するわけではありません。 財政破綻が起きれば、国債は発行できませんから、当然のことながら、増税が行われるということになるでしょう。 そして、その際の税率は、やはり30%程度となるでしょう。 

要するに、どんなことをしても、消費税は30%程度は必要だし、社会保障の削減も避けて通れないということです。 負担増を避ける魔法はないのです。  今こそ、国民は、政府に何かをしてもらうのではなく、政府のために何が出来るのか、長期的な視点に立って考えることが必要なのです。 

私が橋下大阪市長に期待すること

こういった事実を踏まえると、大阪維新の会が国政に進出する際に、一番大事なことは、国民負担増を如何に明確に打ち出し、その政策に現実味を持たせることが出来るかということでしょう。 さもなければ、不誠実という誹りは免れません。 国民受けを狙った、インチキのインチキによるインチキのための政治からの脱却が今ほど求められていることはないのです。 

橋下氏率いる、大阪維新の会には、自らの生活を多少犠牲にしても日本の将来のために貢献しようという国民の受け皿として、非現実的な夢を語るのではなく、真正面から国民負担増を主張していただきたいと思います。

正に、これこそが、大阪維新の会の試金石となるでしょう。
   

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