物のインターネット

池田 信夫

ARMがCortex-M0+という省電力CPUを発表した。これはバッテリー駆動の家電製品に搭載して消費電力などを制御する物のインターネット(IOT=Internet of Things)のコアとなるものだ。

家庭内で省電力のスマートセンサーやスマート家電を結ぶネットワークの中心になるのは、スマートメーターである。たとえば夏場に電気料金が上がったら、スマメからWi-Fiなどで家電に信号を送り、空調の温度を上げたり照明を切ったりすることができる。


このようなIOTにつながる機器は、2020年には全世界で500億個に達すると予想される。一時期はやった「ユビキタス・コンピューティング」は幻に終わったが、電力供給に不安のある日本では、電力消費を数十%減らせるHEMS(住宅エネルギー管理システム)の需要は大きいだろう。

ところが先日の記事でも書いたように、日本のスマートメーターは電力会社ごとにバラバラに配備される予定で、通信プロトコルさえ標準化されない。このままでは、東京と大阪では別の規格のHEMSが必要になる。おまけにHEMSも「エコーネット・ライト」というガラパゴス規格なので、Cortex-M0+のような世界標準部品が使えない。

このままでは「次のインターネット革命」ともいわれるIOTの世界で、日本は大きく立ち後れるばかりでなく、スマメが電力会社に独占されると電力自由化も止まってしまう。アゴラ研究所では、この問題について専門家と企業が話し合い、規格のオープン化を求める研究会をつくる予定だ。関心のある方は、事務局までご連絡を。

追記:週刊ダイヤモンドによれば、10月に予定されている東電の国際入札は、実質的には「電力ゼネコン」との談合らしい。