ソーシャルゲーム産業の次の焦点は行政からの自主性確保

2012年03月23日 07:00

21日に発表になったソーシャルゲームプラットフォーム事業者6社による「ソーシャルゲームの利用環境向上等に関する連絡協議会」の設立は、ソーシャルゲーム業界の今後の成長にとって大きな意味を持つ。現在の社会的な批判に対して、業界として一つの方向性を示したからだ。どのような議論が積み重ねられていくのか、また、社会的に透明性を持つ説明を行えるのかといった課題は存在するが、最初の一山越えたのではないかと感じている。

日経新聞電子版のゲーム読解で、CERO(コンピュータエンターテインメントーティング機構)の設立経緯の話を紹介したが、今回のソーシャルゲームで起きた課題を乗り越えるためには、少し違う状況があることを指摘しておきたい。


ポイントは、情報政策の主導権を長年競っている経済産業省と総務省の争いに巻き込まれることを警戒する必要があることだ。これは長年続く、日本の情報政策をどの省庁がまとめていくのか、明確でないことで生まれている問題だ。

CEROの場合、家庭用ゲーム機業界は、経済産業省の管轄と明確だった。同時に、業界側に自主努力で成長してきたという自負もあり、行政の介入前に迅速に問題を解決することに成功してきている。それが、業界として強い自主独立性を守ることにつながっている。

しかし、今回のソーシャルゲームの問題はそうではない。インフラ系は完全に総務省の管轄で、産業育成では経産省の管轄と明快なのだが、ソーシャルゲームのような通信とコンテンツが合わさった分野は曖昧な領域が出てくるためだ。特に、インターネット上の消費者保護という観点では、経産省と総務省は重なった機能を持っている。そのため、どちらの縄張りにするのかという争いが起こりやすい。

実際に、行政が今回のRMT問題を議論の遡上に載せたのは、消費者庁が主催した2月16日の「インターネット消費者取引連絡会(第4回)」だ。「インターネット取引の消費者の安全・安心の確保」のために「法律に基づく行政の措置」と民間への「柔軟かつ機動的な取り組み」を促すための連絡会という位置づけだが、関係省庁には主催の消費者庁以外に、警察庁、総務省、経産省、東京都が参加し、各省庁系列の社団法人が名前を連ねる寄り合い所帯だ。

しかし、この連絡会が、情報政策の管轄をめぐる争いの場であることは、当日使われた資料や、3月7日に発表された議事録要旨を読むとすぐにわかる。

「オンラインゲームの消費者トラブルについて」という発表を行っている一般社団法人ECネットワークは経産省OBがいる組織だ。Eコマースのトラブル解消のための団体という位置づけなので、産業育成という名目は立っているが、ユーザーの「ネット取引のトラブル」をここに集める必要があるのかは疑問に思う。今回の発表はユーザー側の抱える問題のみで機能的には国民生活センターと被っている。

一方で、議事録には「フィルタリングのかけ方については、昨年から、コンテンツ事業者等で構成する安心ネットづくり促進協議会で協議されている」という文言がある。この協議会は、財団法人マルチメディア振興センターというやはり総務省OBのいる団体が事務局となっている。そのため、総務省の参加者が発言したと考えて良いだろう。この財団法人は理事に関西電力や、NEC、NTTデータなどの企業の名前が並び、インフラ系の事業者中心だ。ゲームに直接関係するコンテンツ事業者は賛助会員企業にはいない。

ただ、協議会自体は「メディアリテラシーの向上」を目的とした任意団体とされ、07年頃の出会い系サイト問題を受けて作られたと思われる。情報モラル・リテラシー教育についてのページはDeNAが編集を担当しているが、サイト自体にはコンテンツ関連のフィルタリングについて具体的な情報は現状ない。この発言は先手を打ったのだろう。

この対立は、別段今回だけではなく、ある意味、日常茶飯事の現象だ。今回の問題では、複数の省庁の綱引きが行われる中でバランスを取って動く必要のあるセンシティブ性を抱えていることは意識すべきだ。ソーシャルゲーム業界が巻き込まれても、何一つメリットはないだろう。

ゲーム産業を行政が支援することで、成功しているケースはカナダのモントリオールなど世界にはいくつかある。ただ、日本の場合は、コンテンツ産業の隆盛には、行政の支援は必要なかった。各社は、勝手に成長し、独力で世界に進出する努力をしてきた。これは今世界に進出するために厳しい争いを繰り広げているソーシャルゲーム各社も同様だ。

気がついたら「Cool Japan戦略」に組み込まれてしまっているが、特にゲーム会社は当てにしてない。むしろ、規制がなかったからこそ、ゲーム会社も、ソーシャルゲーム会社も自由にイノベーションを生むことができたと考えるのが自然だ。この状態は、課題も生みやすいが、イノベーションの苗床にもなる。

次の焦点は、行政の介入なしに、自由度を守れるのかだろう。ただし、社会との折り合いは付けなければならない。今回の6社の連絡会設立が、自主努力によって社会的な理解を得られる状況をつくり、イノベーションを通じて、成長を継続できる状態を守れるよう願ってやまない。

新清士 ジャーナリスト(ゲーム・IT) @kiyoshi_shin

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