「国民の敵」ビジネスについて

2012年04月01日 01:03

池田先生の記事「江田憲司氏のマインドコントロール」に少しだけ補足します。

江田憲司氏は私の選挙区ですので、江田氏の主張の変遷は良く知っています。 かつては財政再建を訴えていたので、恐らく増税の必要性は理解しているものと思います。 その江田憲司氏がなぜ、今回、「財務省のマインドコントロール」のような本を出版したのかについて、私の考えを述べておきたいと思います。


政治の役割の変質

自民党の長期政権を振り返ると、田中角栄に象徴されるように、利益誘導型の政治が幅を利かせる時代が長く続きました。 しかし、バブル崩壊後、低成長の時代に入ると、始めは景気回復をスローガンに、ばら撒き型の政治が続いたものの、小泉政権になると、流石に財政の悪化が深刻になり、それを転換する必要が生じ、郵政民営化に代表される、構造改革をスローガンにするようになりました。 これはニュートレンドでしたが、リーマンショック後に麻生政権で再びばら撒きに転じ、2009年民主党が自民党から政権を取った選挙では、民主党が無駄の排除による16.8兆円の財源捻出による、ばら撒きを公約に政権に就いたわけです。

しかし、今、野田政権が消費税増税を目指していることでも分かるように、財政危機の深刻化から、子供手当などの、ばら撒きを撤回せざるを得なくなり、公約を反故にして増税をせざるを得ないところまで追い込まれています。

最早、政府には、ばら撒きをする余裕はなく、これからの政治は、富の分配から、負担の分配へ変わらなくてはならないのです。 

ポピュリズムの変質

こうした負担の分配をせざるを得ない状況では、政治家が国民の人気を得ようとすれば、ばら撒きに代わる方法が必要です。 それが、古典的な方法ではありますが、 「国民の敵」をでっちあげる方法なのです。  この方法は、かつてのいくつもの戦争の原因(国民の不満を海外に向けさせる)でもあり、ナチスのユダヤ人虐殺にも繋がったものです。 

江田憲司氏は、最近の著書、「財務省のマインドコントロール」では、財務省を「国民の敵」に仕立て上げているわけです。 これは、多く出版されている、リフレ派の日銀批判本、例えば田中秀臣氏の「デフレ不況、日銀の大罪」のような不況の原因は日銀のせいだ、といった主張の本に通じるものがあります。

つまり、実際には、問題は非常に複雑なのに、どこか一点に原因を帰着させてしまい、問題を oversimplify してしまうことで、一般人に分かり易い反面、問題の本質とは無関係になってしまっているのです。 

リフレ派の主張のように、デフレを反転させてインフレにすれば万事解決というほど、物事は単純ではなく、本質的な問題は全く別のところにあるのです。 

こういった問題の極端な単純化は、一般人には分かり易いので、受けが良いのですが、極めてミスリーディングであり、国民の判断を誤らせる危険が大きいといえるでしょう。 

最近、注目されている、橋下大阪市長の政治手法も、私の見る限り、「公務員、教員、労組」を「国民の敵」に仕立て上げることで、支持を広げる手法ではないかと思いますし、小沢一郎一派も野田首相を「国民の敵」にすることで、自らの生き残りを図ろうという手法でしょう。

国民は、こういった「国民の敵」ビジネスに惑わされることなく、単なる見世物として冷静に観察することが肝要ではないでしょうか。

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