宝の山 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

コンビニにたまに行くと商品がどんどん入れ替わっていることに気がつきます。あぁ、新しいのが入った、という感覚が日本の消費者には当たり前のスタイル。そして、それを手に取り、お会計をする人も多いでしょう。日本は新製品天国。溢れんばかりの新製品群の山は日の目を見れば優秀とも言われます。

ビールや発泡酒なども、もうどれがどれだかわかりません。消費者もどこまで商品の違いを理解しているのでしょうか。結局値段で選んだり、缶のデザインで選んだりしていることも多いのではないでしょうか?


資生堂の末川久幸社長。日経ビジネスの編集長インタビューで新製品に頼り切るのはどうかと疑問を呈しています。社員が新製品が出ないと売る物がないと嘆くその体質にメスを入れ、新製品の半減化に挑戦しています。素晴らしいことだと思います。

カナダのように何年経ってもまったく進化しない製品に囲まれているのも勘弁ですが、日本に来て新製品の嵐というのもしばらくするとちょっと疲れてきます。カップラーメンでも結局味がわかっているよく知った長年のブランドに手が伸びるのはたまにしか買わないから失敗したくない、というコンサバな気持ちが前に出てきているとも言えます。

資生堂の挑戦は企業の新製品開発姿勢への疑問でもあります。莫大な開発費をかけることを良しとし、その中で10%しか花が咲かない可能性への投資は思想的には正しいのでしょうけど、化粧品を含めた飽和しているマーケットに於いて小手先勝負では奥行きもないという見方でもできます。

アップル社は製品のラインアップを凝縮し、わずか数品目の主要商品で勝負しています。そして、それぞれの主要商品が1、2年でモデルチェンジをしていくスタイルは自動車業界とも似ています。最も重要なのは新製品の乱打戦ではなく、よく考えられた商品を全社一丸となり推し進めるぐらいのパワーが結局大きな市場シェアの確保につながるのではないでしょうか?

家電売り場でパソコンやスマホを見ていても春と秋の二回、新製品を投入するのが当たり前になっています。その違いはもはや販売員すら明白に説明できず、型が古くなった商品は激しい値引きにさらされます。仮にこのモデルチェンジが年に一度だったらどうなるのでしょうか? 皆がそうすれば丸く収まるのでしょうけどライバル社が新しいものを出すから対抗する、という構図から抜けられないのでしょうか?

資生堂の解は過去に開発した商品をリモデル化することにありました。ほとんどの企業では日の目を見ることがなかった商品は山のようにあることでしょう。これを再発掘することで思わぬヒット商品も可能なのかもしれません。

開発サイクルを変えることは開発費の節約のみならず、よい商品を厳選して出そうとする別のメリットもあるような気がします。このあたりも日本の企業が課題としなくてはいけないところかもしれません。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年4月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。