「巨額のムダ」という集団催眠

2012年04月04日 12:23

最近

首相官邸ホームページ、4500万円かけリニューアル
2012.4.2 産経新聞

 首相官邸のホームページ(HP)が2日、リニューアルされた。「さまざまな政策情報をより分かりやすく発信する」(藤村修官房長官)ため、各省庁が個別に発信していた政策情報を一括検索できる機能や、子供向けサイトを新設した。岡田克也副総理が新聞・雑誌の購読中止にいそしむ中、HP更新に要した費用は約4500万円という。

というニュースがありました。 このニュースに目くじらを立てた方も多いと思います。 「また無駄遣いをして」と思われた方も多いでしょう。


天下りの問題や、公益法人、公務員人件費にも厳しい目が向けられています。

橋下大阪市長率いる大阪維新の会は、地方分権、道州制の導入、国から地方への財源移譲などで、行政改革を進め、ムダをメッタ切りにすると言っています。

また消費増税に反対する小沢一郎議員は、未だにムダの削減で16.8兆円の財源は出せると主張しているようです。 

ここでは、このようなムダの削減で一体どのくらいの財源が出てくるのか、政治家はなぜムダの削減を主張するのか、簡単に考えてみましょう。

一兆円というお金

行政にムダがあるということは、裏を返せば、誰かが不正利得を得ているということです。 不当に水増しされた工事費用は業者の利得になり、天下り先で不当に高い給与を受け取れば、天下りした官僚の利得になります。 

巨額の財源という場合、おおざっぱに言って一兆円という規模が、財政再建に向けては「巨額」という金額になるでしょう。 一兆円とはどの程度のお金なのでしょうか?

年間一兆円が不正利得として誰かのポケットに入る、ということを考えると、この不正利得を受け取る人数は、どの程度の人数になるでしょうか。 100人が受け取る場合には一人あたり100億円、1000人とすれば一人10億円、1万人とすると一人1億円、10万人とすると一人1000万円、100万人とすると一人100万円ということになります。 

もうお分かりですね。 一兆円の不正利得を阻止(=ムダの削減)するとなると、少なくとも10万人が不正利得を得ているといった実態がなくてはならないのです。 

日本の建設業者の就業人数は約500万人、彼らの全てが談合等で不正利得を得ていると仮定しても、年間一兆円を山分けすれば一人、年間20万円の不正利得ということになります。 勿論、こんなことはありません。

天下り官僚は、年間5-600人と言われていますから、彼らが平均5年働き続けたとして、年間一兆円を受け取るには、年間一人当たりの給与は、3億円以上となり、とても一兆円の金が流れているとは思えませんね。

ムダの削減で巨額の財源が出てくることはない 

このようにムダの削減で、一兆円といった金額の節約をすることは、極めて困難です。 現在、プライマリーバランスの赤字23兆円(実態はもっと大きい)を考えると、上の考察でお分かりのようにムダの削減は、全く力不足です。

そもそも、国民一人当たり、年間何万円も、誰かにお金を不当に巻き上げられていると考えること自体、荒唐無稽な話です。

ムダの削減で、数兆円もの巨額の財源が見つかるなんてことはあり得ないでしょう。

ムダの削減という集団催眠

政治家がムダの削減を叫ぶのは、国民の受けがよいからです。上の簡単な考察からわかるように、財政の上からは、実質的な意味はほとんどありません。 

これは一種の集団催眠のようなものです。例えるなら、円錐を眺めると、自然にその頂点に目が行くでしょう。 これと同じようなものです。 ホームページリニューアルに4500万円というニュースが流れると、つい、政府はきっと巨額の無駄遣いをしているに違いない、となってしまい、規模の計算が出来なくなってしまうわけです。政治家はこういった集団催眠状態を利用しているわけです。

少し冷静に考えれば、ムダの削減を財源とする財政再建は不可能なのですから、ムダの削減は粛々と行いながら、現実的には増税と社会保障の削減を組み合わせて、財政再建を行うしかないでしょう。

まあ、防衛はしないとか、公務員は無給で働くとか、国のカタチを極端に変えれば、増税しなくても財政再建できるのかもしれませんが。

2.26事件後に、石橋湛山は

「日本人は根本問題に執着しすぎて、その根本問題が 解決しなければ何をやっても解決しない、あるいは、根本問題の改革のためには機構の 打破や変改がすべてだと考えがちである」

と指摘し、これを「根本病」と呼んだそうですが、日本を根底から変えるのなら、まず財政再建からやるべきでしょう。 

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