外務省がモロッコに108億円の円借款供与、「クール・ジャパン」戦略などの司令塔として「広報文化外交戦略課」(仮称)を新設するとか

山口 巌

些か旧聞に属するが、NHKが伝える所では、このゴールデンウイーク中に玄葉外務大臣が、北アフリカのモロッコを訪問したとの事である。

玄葉外務大臣は、北アフリカのモロッコを訪れてモハメド国王と会談し、民主化の取り組みを評価したうえで、最大108億円の円借款を行うことや投資協定の締結交渉に向けた協議を始めることで一致しました。

そして、玄葉大臣とモロッコ側は、地方都市の下水道整備を支援するため最大108億円の円借款を行うとする書簡を交換し、両国間の投資協定の締結交渉に向けた協議を始めることで一致しました。会談のあと、玄葉大臣は記者団に対し「北アフリカ地域が歴史的変革に見舞われるなか、モロッコは、先手先手で民主化に向けて積極的な取り組みを行っていて、評価できる。政治改革や経済発展を支援していきたい」と述べました。

108億円もの手土産を携えて訪問すれば、それは国王も会ってくれるだろうし、国を挙げての歓待もあったかも知れない。

モロッコ政府観光庁のホームページが示す通り、この国は観光資源に恵まれており、ヨーロッパの人達にも昔から人気がある。

玄葉外務大臣も、大いにモロッコでのゴールデンウイークを楽しまれた事であろう。

それにしても、債務問題に呻吟する日本が、何故北西アフリカに位置するモロッコに108億円もの巨額の円借款を供与せねばならないのか?

円借款と言うからには金利はゼロでは無い筈である。一方、モロッコの様なイスラム国家では金利は認めておらず、結局、金利分は「債務救済援助」でプレゼントしますよ、の如き裏約束があるのだろうか?

外務省は未来永劫、かかる「サンタクロース外交」を継続する積りなのか?

モロッコの旧宗主国はフランスであり、モロッコの富を強奪した経緯がある。しからば、過去の罪滅ぼしも含め、面倒を見るのは本来フランスではないのか?

野田首相は「消費税増税」に随分熱心で、「不退転の決意で」、「職を賭して」取り組むとの決意表明が大好きである。国民の痛みには冷徹に対応されているが、外務省に対しては甘過ぎるのではないか?

納税者としては当然こういった疑問が湧いて来る。

率直に言って、外務省はこういう「バラマキ」以外何か真面な仕事が出来ないのであろうか?日本の現在の財政事情からして余りに具合が悪過ぎる。

一方、読売新聞が伝える所では、クール・ジャパン発信強化…外務省組織一元化へとの事である。

外務省は今夏の組織改編で、海外への広報や、海外との文化交流を担当する組織を一元化し、日本のアニメやファッションなどの魅力を海外に広める「クール・ジャパン(かっこいい日本)」戦略などの司令塔として「広報文化外交戦略課」(仮称)を新設する方針を固めた。東日本大震災の風評被害対策や、礼儀正しさや忍耐強さといった「日本的価値」の発信を強化する狙いもある。外務省が情報発信の体制を見直す背景には、世界の主要国が文化交流などを通じて好感度を高める「ソフトパワー」外交を強化していることがある。

これは、はっきり言って意味不明である。そもそも、商品やサービスの宣伝、プロモーションが外務省に出来ると思えず(それでは何が出来るのか?と聞かれたら答えに窮する訳であるが)、結果、以前のアゴラ記事、外務省に見る小さな政府の欺瞞で説明した通り、民間企業(この場合は広告代理店)への業務の丸投げが予想される。

イベントの様な広告代理店の業務の中身を外務省が理解出来ると思えず、結果、代理店に依って予算が食い物にされる事になる。

外務省の思惑としては、先ずこういった組織を新設して予算の獲得に成功し、何れはJICAの如き独立行政法人を設立した上で、天下りの受け皿にしたいのだと思う。

しかしながら、これは、日本の財政からみればバケツの底に又新たな穴が一つ開く事に他ならない。

そもそも論であるが、この種の仕事は1958年に設立された独立行政法人である、JETROが担うべきものではないのか?それとも、玄葉外務大臣がJETROの存在を知らないのであろうか?

この件も又、呆れる程お粗末極まりない話である。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役