原発の再稼働と世界の中の日本

2012年05月08日 12:30

原発の再稼働問題は、この夏場をどう乗り切るのか、といったことに関心が向いているように思われます。 しかし、たとえ停電が起きなくても、考えなくてはならない、大きな問題があります。  

それは、日本の電気料金は国際的に見ても高いということです。


高い日本の電気料金

下の図を見ると、日本の電気料金は国際的に見て、高い部類であることが分かります。

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さて、このように高い料金なのは、天然ガスを液化天然ガスの形にしないと輸入できないなど、いろいろな理由が考えられるでしょうが、人件費の比率は決して高いものではありません。実際、平成20年料金ベースでみると,電気の総原価は15兆2757億円。内訳は燃料費29%,購入電力量13%などで、人件費は9.0%(1.4兆円)程度にすぎません。 

また注意すべきは、電気料金はエネルギー源に何を用いるかで変わることです。 

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上の図でわかるように電源の構成比は国により大きく変わっています。 ドイツの電気料金が高いのは、太陽光発電の買い取り価格が高いのも一因で、フランスの電気料金が安いのは、原子力に大きく依存していることに原因があります。 

このように、電源として、どのようなエネルギーを用いるかで、電気料金は変化しますが、どのエネルギーを用いるのかは、国民の選択であるとも言えるでしょう。  環境を重視するか、経済性を重視するかなど、いろいろな選択肢があります。

燃料費の増加分の問題

現在、原発の停止により、燃料費が増加し、今年度は3兆1千億円もの増加が見込まれています。追加燃料コスト3.1兆円は総原価の約2割に相当します。 昨年度と合わせれば、5兆円以上の国富が失われることになります。  

これを電気料金に転嫁しないと、電力会社は倒産してしまいます。 上に示したように人件費などの合理化で、燃料費の増加分を賄うことは不可能ですし、電気料金に転嫁しなくても年間3兆円以上もの国富が失われることになります。

グローバル化する世界の中の日本

原発の再稼働を先送りすることは、上で述べたように、ただでさえ高い日本の電気料金をさらに上げることになります。 

そこで心配なのは、電力の安定供給の問題とともに、日本の国際競争力が低下することになるということです。 

この問題を無視するのは、問題ではないでしょうか。日本は島国なのでヨーロッパと違い隣国を意識することは少ないですが、グローバル化する世界の中で、日本だけが高い電気料金ということになれば、日本経済は衰退するでしょう。 エネルギー戦略は、国の将来を左右する大きな問題であり、感情に流されることなく、冷静な判断が求められます。 グローバル化する世界の中で、日本の取り得る選択肢は、非常に限られていることを認識することが、まず必要でしょう。   

長期と短期に問題を切り分けることが大切

現在、原発の再稼働へ向けて「政府の将来のエネルギー政策が見通せない」といった批判がよく聞かれますが、これは全く的外れです。 

将来のエネルギー政策を一朝一夕に決めることは、現実問題としてできません。 エネルギーの大部分を海外に頼る我が国であれば、なおさら簡単に決めることはできないのです。

原発再稼働という短期の問題と、脱原発、再生可能エネルギーの利用拡大といった10年単位の時間が掛かる話を一緒に論じるのは、正しいとは思えません。 長期のことはゆっくり考えることにして切り離し、今は、再稼働について考えるというのが正しい考え方だと思います。

例えば、大阪府、大阪市が政府に要請した八か条の一つ「使用済み核燃料の最終処理方法の確立」も今すぐに答えを出さなくてはいけないことではありません。

脱原発を含めた日本のエネルギー戦略は、グローバル化の中の日本の立ち位置を見極めつつ、最適な戦略を慎重に選ぶのが最良の選択でしょう。  

脱原発について

脱原発を唱える方々にお聞きしたいのは、どうやって脱原発をするのか、特に国際競争力を毀損することなく、脱原発をする明確なビジョンはあるのか? ということです。 国際的なエネルギーの争奪戦が起きている現在の世界において、原子力というエネルギーの選択肢を封印することは、国を危うくすることにはならないでしょうか。 

国民は今のことは分かっても、1年先といった短いスパンでも、将来を見通す人は少ないでしょう。国民にとって電気はどこから来ているのか、といった意識を持ちにくいものです。 今後、長期にわたり原発を停止すれば、実際に、電気料金が上がり、電気料金の負担増から、企業の倒産や、雇用の減少といった現実的被害が明らかになるでしょう。 そのときにならないと、国民には、原発の停止とはどういうことなのかが、分からない可能性があります。 

民意は移ろいやすいものです。 民意を大事にすることも大事ですが、ここは、日本の将来を見据えた冷静な判断をするべきときではないでしょうか。

取り敢えず原発を順次再稼働し、長期のエネルギー戦略は別に考えてゆくというのが、正しい姿勢ではないかと思います。 

追伸 私はエネルギー問題の専門家ではなく、ここで述べたのは、全くの常識論で、目新しいことは何もありませんが、何かの参考になれば幸いです。 人件費の割合については釣雅雄先生のツイートを参考にしました。厚く御礼申し上げます。 

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