「脱公務員」のススメ

2012年05月10日 09:00

前回の投稿(搾取されうる若い世代へ)の際、「公務員という立場でそのようなことを発言したところで全く説得力がない」など的確なご指摘をいただきました。

そのご指摘に対する回答として、というわけではもちろんありませんが、私事ながら、2012年3月をもって公務員を退職し、個人事業主としての生活を始めることとしました。

公務員の雇用体系や制度、それを取り巻く価値観は、終身雇用を前提としており、中途で退職をすることを想定したものではありません。そのため、「脱サラ」(注1)ならぬ、「脱公務員」(注2)であるが故に直面しなければならない「ハードル」もいくつか存在します。

公務員の人件費削減が声高に叫ばれる現在において、私のような「脱公務員」が今後増加していくことは想像に難くありません。本投稿では、私が実感した「ハードル」を半ば愚痴的に紹介することで、「脱公務員」を考える方の判断材料や、一つの問題提起となればと思います。


① 周囲の反応・説得

「公務員を辞める」そう宣言したとき、それがどういった理由であれ、周囲の反対を受けることは覚悟しておく必要があります。自分が感じている以上に、親や兄弟姉妹、親戚は、自分が「公務員として働いていること」に対して安心し、満足し、頼りにしているからです。雇用体系がそうであるように、周囲も自分が公務員を辞めることを想定していないので、例外なく驚かれます。そして、その反応は時に暴力的ですらあります。

「周囲の納得のうえで新しい道を踏み出したい」そう考えるのならば、その説得には多大な時間と労力が必要になります。

② 必然的な準備不足

民間企業等の雇用者から独立する場合、副業を本業に転換するやり方と、会社の事業をスピンオフするやり方がほとんどです。「脱公務員」の場合、これらのやり方は、ほぼ不可能です。

公務員は職務専念義務があり、副業は法律で禁止されています。そのため在職中に収入モデルをあらかじめ構築しておくことができません。

公務員の業務の性質上、その事業をスピンオフすることは現実的ではありません。そもそも利益を目的とした事業モデルではないので、民間や個人の事業としては成立しないことが殆どです。また、公平性の観点から、関係業者とのつきあいにも制限があるので、事前にコネをつくることは困難です。

事前準備が限定されるので、退職後、金銭面を含めかなりのリスクを負うことになります。

③ 社会的信用の落差

「公務員であること」により享受できる最も大きなメリット、それは収入面というよりも、社会的信用の高さです。当たり前のことですが、「脱公務員」になると、定職がなくなるので社会的信用はほぼゼロになります。この落差をあらかじめ正しく認識しておく必要があります。

通常の「脱サラ」の場合も同様ですが、現職の収入証明が出せなくなることにより、苦労する場面が増えます。アパートの賃貸契約1つとっても、自己名義で借りることが難しくなります。親や兄弟による代理契約、ないしは強い保証人が必要になります。クレジットカードについても、当分の間は新しく作るのは諦めたほうがよいです。

自分に対する周囲からの見方も当然変わりますし、白い眼で見られることも増えます。その落差に戸惑わないよう、あらかじめ認識し、覚悟を決めておくことが精神衛生面においても重要です。

* * *

「脱公務員」は現状の日本社会においてはイレギュラーな存在であり、許容されにくい社会的立場にあるといえます。そのため直面する「ハードル」も多いですが、それを踏まえたうえで、「メリット」の方が大きいという方に、「脱公務員」をおススメしたいと思います。

注1 本記事内では、「サラリーマンを辞め、独立して事業を行う」という意味
注2 本記事内では、「公務員を辞め、独立して事業を行う」という意味

小杉 隆大 (@kosubee)

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