本質的な問題を避けるな

2012年05月12日 12:03

最近の日本の閉塞状況は深刻である。 財政危機が深刻化し、少子高齢化も進んでいる。このままでは、いけないことは確かだが、冷静さを欠いた粗雑な論理に基づく極論が目立つようになってきた。 ここでは、そのような極論を排除したい。

日本国内だけを見るのではでなく、世界の中の日本という視点で考えれば、我々には、財政健全化や企業活動の阻害要因を一つ一つ取り除くといった息の長い地道な方法しか残されていないことが明らかになるだろう。


なぜ日本経済は苦境にあるのか

物事には原因があり、原因を突き止めてこそ、解決方法が見つかる。 景気が良くならないのには2つの原因がある:

(1) グローバル化
(2) 機械化、情報化

で、何れも国内の雇用が奪われる原因になっている。

グローバル化やモジュール化は、国内の仕事のアウトソーシングを進めることになった。 CAM(computer aided manufacturing)、CAD(computer aided design)の進展など情報化により、技術移転が容易になり,韓国、中国といった新興国において最新の製造設備の導入が進み、日本製品に遜色のない製品が生産されるようになった来た。家電分野では既に殆どの製品がコモディティ化し、価格以外の差別化が難しくなっているため、コスト高の日本製品のシェアは減少し続けている。 さらに中間財、資本財においても、日本製品のシェアは低下し続けており、技術の優位性が失われて来ていることを示唆している。

例えば、昨年度、巨額の赤字を計上した日本の家電業界の苦境は、こういった動きに対応できず、主力製品がコモディティ化したことによる。

さらにシステムエンジニアリング、ソフト開発なども、元々、モノのない世界であり、極端な技術革新も期待しにくい分野なので、アウトソーシングはさらに容易である。  

その結果、比較的高賃金だった製造業から大量の雇用が失われ、それは、介護、飲食業などの低生産性のサービス産業に流れたため、賃金が低下し、経済が低迷している。 簡単に言えば、日本の基幹産業であった製造業の衰退により、経済の低迷が起きている。 実際、今後も製造業の雇用は縮小を続けるだろうと予想されている。

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(ダイヤモンドオンラインから転載)

産業構造の転換は、止むを得ないが、製造業に替わる、新しい高付加価値のサービス産業が見えていない。 これが見つかるまでは、現在のような経済状況が続くと考えるべきである。

一部で今は超円高であり、そのために日本の国際競争力が低下しているのが不況の原因であるという説も聞かれるが、実質実効為替レートを見ると、現在は決して円高とは言えないことが分かる。 

実効レート

このグラフから2002-2008は円安であり、当時アメリカが住宅バブルであったため、輸出主導で、日本は好景気となったことが分かるが、現在はアメリカ、ヨーロッパも不景気であり、多少円安に振れたからといって、日本が好景気になるとは考えにくい。

冷静に分析すれば、現在の日本経済は、実力通りのパフォーマンスを示していると考えてよい。 今、日本経済は巡航速度で走っているのであって、その意味では不況ではないし、失業率を見ても、欧米先進国の中では目立って悪い方ではなく、むしろましな方である。

日本の立ち位置を考えると、日本は、残念ながらエネルギーのほぼ全量、食糧もかなりの程度、海外に依存している。 従って、日本という国を維持してゆくためには、何かの形で、国際貢献を行ってゆくしか生きる道はない。  その意味で、介護などで日本経済が支えられるわけではない。 

危険な考えの台頭

このような閉塞状況において、以下のような一種の極論が台頭している。  

(1) 日銀の金融緩和によりデフレを脱却すれば景気がよくなり、財政再建にも貢献するという考え。

(2) 資産課税などを強化して、国民の消費を盛んにすれば景気がよくなるという考え。

(3) 地方分権など政治体制を改変すれば、景気がよくなるという考え。

(4) グローバル化を阻止し、日銀の財政ファイナンスによる公共事業の拡大などで、デフレを脱却でき経済が活性化できるという考え。  

以上は、上で分析したような、経済低迷の原因や日本の国際的立場とは、全く関係のない話であることは、ただちに分かるだろう。 

(1)については、上に述べたようにデフレが原因で不況になっているのではないのだから無意味である。 

(2)については、金融資産を持っているのは50歳以上の世代が中心なので、財政を安定させ老後の不安を解消しなければ、消費は盛んにならないのと、もう一つの問題は、彼らが貯蓄を大きく取り崩せば、国債の消化に支障をきたし、長期金利が上昇して財政破綻懸念が大きくなるという問題がある。 

(3)は直接、経済とは関係ない話で、(4)は、グローバル化に抗すれば、日本だけが高コストになるため、競争力を喪失するという問題があるし、財政ファイナンスは制御不能なインフレを招き、財政破綻する。  

上の4つの考えに共通するのは、国際的な視点が欠如しているということである。 

本当に日本が立ち向かうべきなのは国際的な競争であるのに、なぜ国内での犯人捜しに明け暮れているのか、私には理解できない。 日銀が悪い、官僚システムが悪い、公務員が悪い、地方分権といったところで、何か問題が解決するのだろうか。 まして、原発を悪者にして、再稼働を先送りし、国際競争力を喪失するなど、正気の沙汰ではないだろう。

コップの中の争い、足の引っ張り合いはもういい加減にやめたらどうだろう。 

私には、上のような極論は、本質的な問題から目を逸らすための道具としか思えない。 これからの政治は、富の分配ではなく、負担の分配にならざるを得ない。 そのことを直視して、正直に国民に負担と覚悟を訴えてこそ、日本の未来は開けるのではないだろうか。  

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