日本のグローバル化

2012年05月17日 00:28

政府への過大な期待

ギリシャの再選挙が決まり、ギリシャの財政危機は益々混迷を極めている。

次の選挙で急進左派が政権をとっても、ユーロから離脱して、対外債務をデフォルトさせれば、即時に厳しい歳出削減を行ってプライマリーバランスを黒字化しなくてはならないし、ハイパーインフレーションで国民の生活は困窮する。 一方、EUからの支援を得るには厳しい緊縮財政を続けなくてはならない。 

正に究極の選択とはこのことである。 既にユーロからの離脱を見越して、ユーロの引き出しが始まっているようで、予断を許さないが、上手い手はない。

フランスのオランド首相にしても、緊縮財政からの転換を訴えて当選したものの、ユーロ危機に直面すれば、緊縮財政から大きく踏み出すことは困難である。ドラスティックな政策は取れないだろう。

ギリシャ国民にしろ、フランス国民にしろ、私には正しい選択をしているようには見えない。 こういった誤った選択がされるのは、政府に対する過大な期待があるからだろう。 
 


グローバル化で狭くなる国内政治の選択肢

こういった政府に対する過度の期待と裏腹に、現実はどうかと言えば、政府の取り得る政策自体、グローバル化した現在の世界では非常に限られている。ギリシャほどではなくても、日本でも同じだし、現在、世界最強の国であるアメリカだって事情は同じである。

あれほどのエリートの集まった国アメリカでも、失業率はリーマンショック後、高いままだし、製造業の縮小も止まらない。 金融業だって不振のままである。 

グローバル化、情報化した世界では、安い労働力を求めて仕事はアウトソーシングされ、労働は二極化し、格差が拡大する。 それに抵抗して、非正規雇用を正規化したり、保護主義的政策をとれば、逆に雇用を喪失したり、国際競争力を失ったりするだけだ。  

世界は、市場の力学で動いており、これに抗うことは、世界的な政策協調でもしない限り不可能である。 

政府に景気を良くしろ、と期待するのは誤りだ。 1990年以降、政府、日銀の政策で持続的に景気が良くなったという事例があっただろうか。 経済の拡大のためには、社会そのものをグローバル化に則したものに変えなくてはならない。国民自身が変わらなくてはならないのだ。  

日本の電機メーカーの失敗に学べ

我々には、世界経済を動かしている力学に逆らうことなく、グローバル化に適応してゆく以外の選択肢は残されていない。 それを示す好例が、日本のエレクトロニクス業界である。

ソニー・シャープ・パナソニック・NECといった日本の家電メーカーの不振の原因は何か、現在、日本メーカーが束になっても叶わないサムスン電子と、何が明暗を分けたのだろうか。 

私は、日本の市場規模が大きかったので、国内市場を重視し過ぎたことに原因があると思う。実際、日本の家電メーカーの総売上高に占める国内販売の割合は概ね60%以上、NECなどは80%以上である。 一方、サムスン電子は売上の85%は海外である。 

国内市場が小さいサムスンは、海外に照準を合わせていたのに対して、国内の家電メーカーは、国内重視で、政府の産業政策やエコポイントなどの国内の政治に振り回された。 
産業政策では政府は邪魔をしないのが、正しい。政府が市場に介入すれば、最適解とは異なったものになってしまうからだ。 

本当は、日本の家電メーカーは、国内市場より海外市場を重視すべきだったのだ。結局、スマートフォンではサムスンに先を越され、有機ELの大型化でもサムスンに先を越された。 すでに技術面でも韓国の後塵を拝すようになってしまった。 スマートフォンに既に見られるように、虎の子の日本市場でもサムスンのシェアの拡大を止めるのは難しいだろう。

これは、日本における人材を含めた国際化の遅れが原因だと思われる。 

人材の国際化を比較してみよう。 

サムスン電子は、外国人社員の比率を2009年の46%から、2020年には65%にするという。韓国メーカーは小さな国内市場という環境があったために、初めから海外市場を見て、人材も国際化していたのだ。
 
一方、日本のエレクトロニクス業界はどうか、と言えば、パナソニックが新入社員の8割を外国人枠にして話題になったが、2010年時点で日本で働く外国人社員は240人に過ぎない。NECの高度人材における外国人社員の比率はわずかに0.3%(2010年)に過ぎない。海外企業に比較して日本企業の国際化は著しく遅れている。

日本社会もグローバル化を進めるべき

上で見た日本のエレクトロニクス業界の苦境から読み取れる教訓は、そっくりそのまま、日本社会全体にも当てはまる。 日本社会をグローバル化に対応できるように変えてゆく以外に我々の選択肢はない。 

とりわけ、人材の国際化は急務である。 高等教育修了者における外国人比率は、日本の場合わずかに0.7%、イギリスの16%、アメリカの13%に比較して非常に低い。在留資格を得た外国人高度人材の人数はここのところ年1万人を割り込んでいる。

世界の中から優れた人材を探す方が、日本の中からだけ探すのより数段、優れた人材を採用できる。日本だけ、国際化に遅れれば、日本は国際競争力を喪失し、今まで維持してきた技術力でも世界に後れをとることになるだろう。

因みに韓国の大学では原則英語で授業を行うところが多いし、ユーロ圏でも東欧などからの高度人材の流入が著しい。  私の友人のフランス在住のルーマニア人研究者は、今年、韓国の研究所に移籍する。 世界は変わっているのだ。

また、人口動態を考えても、日本が移民を自由に受け入れるようにしないと、日本は世界の中でどんどん、その地位を下げることになるだろう。 島国の特殊性で井の中の蛙のまま、ゆでガエルになりかねない。

残された時間は少ない。 日本社会のグローバル化が進むことを願ってやまない

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