アコーディアゴルフの乱(その2─真価問われる社外取締役の独立公正性) --- 山口 利昭

2012年05月18日 09:31

一昨日に引き続き、アコーディアゴルフ社の事例を取り上げたいと思います。前回は同社の株主優待制度と会社法120条をテーマとしましたが、今回は社外取締役の活動についてであります。現経営陣に対立する大株主サイドの質問状において、なぜ社長のコンプライアンス違反を(当時の)コンプライアンス委員会委員長に告発した際、アコーディアゴルフ社は「第三者委員会」を設置しなかったのか? という疑問を投げかけておられます。また、社長のコンプライアンス問題を告発した専務の方も、社長に対して強く第三者委員会の設置を求めたにもかかわらず、これを一蹴された、とのこと。会社としては、社内の不正調査のために、同社の社外取締役らで構成される「特別コンプライアンス委員会」を設置し、同委員会が社長だけでなく専務の不正も認定した調査報告書を提出しました。


さらに、特別コンプライアンス委員会の調査報告書を受けて、来る6月の定時株主総会において会社側上程にかかる取締役・監査役の人選にあたっては指名委員会(社外取締役および社外監査役のおひとりで構成されています)を設置し、この委員会の指名を尊重した選任議案を総会に上程するそうであります。なお、大株主サイドとしては、ご承知のとおり、すでに「大物ぞろい」の取締役、監査役選任に関する株主提案書を提出済みです。近々大株主側において、株主説明会も開催される予定だとか。アコーディアゴルフ社はいま正に有事の真っただ中にあるわけですが、そこで社外取締役の方々が上記のとおり重要な役割を担っておられます。こういった事態において、社外取締役の方々は独立公正な立場で「株主共同利益」のために行動することは果たして期待できるのでしょうか。

なお、一昨日と同様に、株主委員会サイドに立ってのお話だとおもしろくないかもしれませんので、ここはあえて現経営陣側に味方をするような内容で検討してみたいと思います。

社長ご自身のコンプライアンス違反が問題視されているわけですから、社長にモノ言える立場の方といえば社外役員以外には存在いたしません。しかし(大株主サイドが指摘しておられるとおり)社外取締役が不正発見や追及の場面で実効性が認められなかったオリンパスの事例などからみても、その実効性に疑問を抱くケースも出てきます。そこで第三者委員会の設置を求めて、公正な立場で調査を遂行することを大株主側が会社に要望することも十分に考えられるところです。

しかし、会社との利害関係が存在しない、といったことからすれば、たしかに第三者委員会のほうが独立公正な調査が期待できそうにも思えるわけですが、この「第三者委員会」というものも、一概に公正とは言い切れないところがあるのはご承知のところかと思います。しょせんは現経営陣が委員の人選をして、その委員の報酬もすべて会社側がねん出します。そのような状況で第三者委員会を構成しても、本当に独立した立場で不正調査が行われるのかどうか、ということについては疑問符がつくところかと(そもそも、こういった場面を想定してACFEの公認不正検査士が存在します。また関西には大阪弁護士会と公認会計士協会近畿会が共同で立ち上げた第三者委員会名簿登録人推薦制度も存在します)。いずれにしても、果たして大株主サイドが期待されるような調査に疑問が残る以上は、社外取締役の調査に期待しても特に問題ないのではないか、と考えるのでありますが、いかがなものでしょうか。とりわけ第三者委員会はその調査結果については責任を負いませんが、社外取締役は善管注意義務をもって不正調査にあたることが必要です。会社や株主に対して訴訟リスクを負担する分、社外取締役らで構成される調査委員会についても、独立公正な立場で調査が遂行されるものと期待してもよろしいのではないでしょうか。

つぎに社外取締役らが調査委員会を構成し、その結果報告がなされた後、引き続き指名委員会の委員に就任されていますが、これはどのように考えればよいのでしょうか。この点、大株主側からは5月10日付けにて、「結論先にありき」の「茶番劇」と揶揄されており、大いに疑問だと指摘されています。また、大株主から株主提案権が行使され、ガバナンスに大いなる疑問があると主張しているのだから、大株主側が推薦する取締役・監査役候補者についても、ヒアリング等によって会社側選任候補者のひとりとして審査することを強く求めています。

正直、この点は現経営陣側の行動については強く疑問が残るところかと思います。不正調査を行った社外取締役の方々が、そのまま調査結果も考慮したうえで新たな役員の選任を行う、しかもその選任判断には委員会設置会社とは異なり取締役会への拘束力がない、というのは外観的にみて恣意的な運用の疑いがもたれるのではないでしょうか。そもそも指名したい者が存在する場合、その者を不正調査のうえで、いかようにも判断できる立場にあり、大株主サイドが懸念するような事態も生じます。社外取締役の方々が、本当にこれからの企業価値を向上させるに足りる人を選任したいと考えたのであれば、その方に対して手心を加えない不正調査はできるでしょうか。

ただ、社外取締役が総会で選任された以上は、企業が有事に至ったとき、新たな役員候補を指名するなど喫緊の課題に対応しなければなりませんし、これは株主からも期待されるところです。適切な役員を指名するにあたり、その役員候補者の過去の行動を記録から認識することも重要かと思います。だとすれば、不正調査への期待と役員指名への役割が併存することについては、現在のアコーディア社が有事対応を必要とする段階にあることを考えれば、あながち「誤り」とまでは言えないものと考えます。要はこういった疑惑を跳ね返すだけの倫理観が社外取締役には求められる、ということかと思いますし、現経営陣からの独立性をどのように株主にアピールできるのか、今後の対応に期待してみたいと思います。


編集部より:この記事は「ビジネス法務の部屋 since 2005」2012年5月16日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった山口利昭氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はビジネス法務の部屋 since 2005をご覧ください。

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