政治におけるフリーライダーの論理

2012年05月19日 11:49

大阪市顧問の古賀茂明氏が、ワイドショーで「電力テロ」に言及して問題になっていますが、これは既得権益者を叩くという橋下市長の政治手法の結果と見ることができます。

電力会社は、地域独占企業ですから、正に恰好の標的なのです。

既得権益者を絶対悪に仕立て上げ、攻撃することは痛快であり、日ごろから不満の鬱積する庶民の溜飲を下げるのですから、政治的な効果は大きいでしょう。

しかし、こういった庶民に鬱積する不満を利用し、破壊願望をショウとして実現してゆく手法は、極めて危ういものです。 なぜなら、景気の低迷といった庶民の不満の本当の原因は、既得権益者を吊し上げたところで、一向に解決しないからです。


フリーライダーの論理

橋下市長率いる、大阪維新の会が、なぜ原発の再稼働に反対し、脱原発を訴えるのでしょうか。 

それは、次期衆議院議員選挙で脱原発を訴えることで、原発に反対する国民の票を確実に取り込めると踏んでいるからでしょう。 元から第一党になることなど考えておらず、如何にキャスティングボートを握るか、という点にのみ関心があるわけですから、マジョリティをターゲットに選挙運動をしなくても、国民の一定数の支持がある政策を訴えればよい、ここが、民主党、自民党などとは立場が異なるところです。 

しかも、昨年の福島第一原子力発電所の事故で、ヒステリックに脱原発を主張する国民は相当数存在し、彼らは、脱原発を強く主張しさえすれば、確実に支持してくれるのです。 現在の状況では、脱原発を訴えるのが、キャスティングボートを握る、安全確実な道なのです。

実際にはエネルギー政策は大阪維新の会の政策のごく一部であり、地方分権、地域主権といった政策の方が大阪維新の会の主要政策ですが、こういった抽象的な政策より、脱原発は極めて具体的なので、共感を得られ易いわけです。 

また、再稼働に反対し、阻止した結果として、節電などにより、大規模停電が起きなかった場合には、「政府や関電の電力需給見通しは、嘘だった」と非難できますし、大規模停電が起きた場合は「政府の節電計画の甘さ」といった非難が出来るわけで、大阪維新の会としては、正にフリーライダーに徹することが出来るわけです。 

こうしたわけで、橋下市長は、脱原発の旗を降ろすことは、考えておらず、再稼働には、今後も反対し続けることになるでしょう。 

問題の深刻化

しかし、原発の再稼働が先送りされることで、「日本の直面する本質的な問題」 は解決するどころか、一層悪化するでしょう。 実際、年間3兆1千億円もの燃料費の増加をどうやって負担するかという問題は「原発の再稼働と世界の中の日本」 で書いたように、電力会社の総人件費が1.4兆円ほどしかないので、合理化で電力会社に負担させることは不可能ですし、国際的に高水準にある電気料金のさらなる値上げにつながるのです。

もっと深刻なのは、本当に今考えなくてはいけない、日本の本質的な問題、例えば、財政再建や社会保障の問題から、目を逸らすことにつながるということでしょう。   

政治の行き詰まり

こういった、政治の歪みが生じるのは、政治が行き詰まっているからです。

今、政治家が頭を抱えているのは、どうやって国民の人気を得るかということです。 なぜなら、財政の悪化に伴って、国民への利益配分が益々困難になっているからです。 

現在、大阪維新の会の政治スタイルでみられるのは、

   利益配分(予算の分捕り合戦) ⇒ 犯人捜し(既得権益者糾弾合戦)

という政治スタイルの移行です。 

しかし、こういった手法では、国民の望む景気回復は実現できません。 元々、政府のできることは、経済資源の再配分だけであり、既得権益者を吊し上げたところで、所詮、コップの中の争いに過ぎません。

問題の本質は、日本の産業構造の転換といった、ずっと根深いところにあるのです 地方分権も同じで、国の予算を地方によこせといったところで、本質的に何かが変わって成長が高まるなんてことはあり得ない話です。これも所詮コップの中の話です。 
 
一方、既成政党はというと、自民党は「列島強靭化基本法」 なるものを制定し、平成24年度からの10年間で200兆円もの公共事業を行うという、マニフェスト原案を作ろうとしているようです。原点回帰、すなわち、利益誘導に戻ろうというわけですが、現在のような財政状況で、こういった案が出てくること自体、もう呆れるしかありません。 自分たちには何のアイデアもない、ということを曝け出しているようなものです。 

もう一度裸の実力と向き合おう

私は、今の日本に必要なのは、裸の実力と向き合うことだと思います。

既に一部で、韓国などの後塵を拝すことになってしまった、日本の技術力、企業の自由な活動を阻害する規制、企業にとって負担が大きい現在の社会保障制度、こういった本質的な問題を地道に解決してゆくことや、 「日本の国際化」 を進め、移民を受け入れ、人材を世界から呼び込むようにすることが、今一度、日本を輝かせることになるのではないでしょうか。 
 
コップの中の争い、日本国内での足の引っ張り合いをしているときではありません。
 

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