東京スカイツリーが開業した事でもあり、テレビは原点回帰し国民の期待に応えるべき

山口 巌

NHKが伝える所では、東京スカイツリーが開業との事である。

高さ634メートルの世界一高いタワー、「東京スカイツリー」が22日正午に開業しました。あいにくの雨もようとなりましたが、この日を待ちわびた大勢の人が列を作り、展望台で空の散歩を楽しみました。東京スカイツリーは地上デジタル放送に対応した電波塔として東京・墨田区に建設され、高さ350メートルと450メートルに展望台が設けられています。


改めてこういう発言をするのは些か気が引けるが、634メートルは矢張り凄い高さである。今一つ、ピンと来ないと言う方は、高尾山(599メートル)に、歩いて登って来れば良い。今の季節は、山頂近く迄沢に沿って登る6号路が涼しくてお勧めだが、普段歩かない人だと二時間弱かかる。

こういう世界に冠たる立派な「電波塔」が完成した今こそ、テレビは原点回帰し国民の期待に応えるべきと思うのである。

その第一は、「公正」で「中立」な報道に努める事である。このアゴラでも何度か苦言を呈した経緯があるが、テレビはどうしても、「経費」をかけず「視聴率」を取りに行く習性がある。

その結果、視聴者に取って普遍的な、「不安」、「恐怖」、「怒り」、「怨嗟」、「嫉妬」を人工的に煽り、「マス」を一時的に創造しマネタイズに走る。露骨に言ってしまえば、事ある毎に「視聴率乞食」に堕すと言う事である。

この事が、小沢議員の政治資金収支報告書期ずれ記載問題や、福島の原発事故対応を、本来あるべき物から大きく歪める事となり、結果、国益を大きく損なっていると思うのである。

第二は、「グローバル化」の潮流に即して世界のニュースの割合を増やす事である。昨日の、WSJが伝える所では、日本は引き続き、対外純資産残高で世界一との事である。

同じ世界一と言っても、「電波塔」の高さと「対外純資産」の残高ではまるで重要度が異なる。今後の日本の若者の主たる仕事は、如何に「対外純資産」の生産性、今少し簡潔に言えば、ROIを高めるかに収斂する。

若者が、「何を学び」、「どう生きるか」と言った極めて重いテーマの背景となる。従って、本来、東京スカイツリー等より遥かに時間を割き、解説も加え視聴者(殊更、これから活躍せねばならぬ若者)に判り易く説明すべきなのである。

最後は、番組(コンテンツ)のネット公開である。テレビ関係者がこの課題に対しある種の嫌悪感、恐怖心を持っている事は実に奇妙であり、不思議でもある。

私は情報源として、BBC Newsを活用している。何故かと言うと、先ず第一に、報道の質が比較的「中立」、「公正」であり、国際ニュースが充実しているからである。

今一つは、「記事」(テキストベース)、「写真、図、グラフ」、「動画」がバランス良く組み合わされている点である。昨日、Nasaでの打ち上げが成功したSpaceX関連に就いて知りたければ、このページを参照する事になる。

私は何時も先ず記事を読み、そして今一つ理解が難しい所では大体下記の様な説明資料の助けを借りる。そして、ある程度理解が出来た所で、音声付のニュース映像を視聴する(記事最初の写真をクリック)。頭の色んな場所を使う事で、より正しい理解に近づけるのだと思う。

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無線対応型のパソコンで、仕事場やCafeで普段アクセスしているが、勿論、携帯電話やタブレットPCも使用可能であるから、時間や場所に制約される事なく、実に便利である。

翻って、日本の場合はテレビ局の親会社が新聞社と言う事もあり、ニュース番組は自宅のテレビで出勤前と、帰宅後視聴し、ニュース記事は朝刊であれ、夕刊であれ、駅の売店で購入し電車での移動中に読んで欲しいと言う願望と推測する。しかしながら、こう言った光景は、最早「昭和」のもので、二度と帰って来る事はない。

極論すれば、ニュース映像はネット記事にembedされた物以外、一定レベル以上の人たちには視聴される事が無いと言う事である。

余談となるが、こういう発想の真逆にあるのが、態々専用の電波帯域を確保した上で、携帯端末を対象にテレビ放送を実行すると言うNOTTVである。私は、終始一貫電波帯域の無駄使い以外の何物でもないと考えている。やる意味が理解出来ない。

テレビ局が、今の様な総じて質の低いサービスを継続すれば、視聴者の質の劣化は避けられず、結果、東京スカイツリー以外誇るものなしになってしまう。テレビ局関係者はこの機会に、国民の期待に応えると言う事はどういう事なのかを真剣に考えるべきと思う。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役