政府は経済成長をコントロールできない

2012年05月24日 00:02

公明 100兆円規模の公共事業を

5月21日 21時48分公明党は、党の地方組織の代表者らを集めた会合で、防災や減災を対象に、今後10年間で100兆円規模の公共事業を実施することで経済成長を図り、増税だけに頼らず財政再建を進めていく方針を次の衆議院選挙の政権公約に盛り込むことを確認しました。

そして会合では、防災や減災を対象に、今後10年間で100兆円規模の公共事業を実施することで経済成長を図り、100万人の雇用を確保するとともに、増税だけに頼らず財政再建を進めていく方針を、次の衆議院選挙の政権公約に盛り込むことを確認しました。

という「ニュース」が21日にありました。 自民党の、「国土強靭化基本法」構想に呼応する形で出てきたものと考えてよいでしょう(自民の案は10年間で200兆円)。

このような、大規模公共事業の案が出てくるのは、景気回復を謳って次期衆議院議員選挙を有利に戦いたいということでしょう。 

しかし、政府は経済成長をコントロールできるのでしょうか? 


老朽化するインフラ

まず、こういった新しいインフラ整備より前にやっておくことがあるでしょう。それは老朽化したインフラの更新です。

国土交通白書などによると、2009年時点で、20年後に築50年以上となる割合は分野別で、「道路・橋」の51%、河川管理施設(水門など)は51%、下水道管渠(かんきょ)22%、港湾岸壁48%といった具合だ。

 日本には長さ15メートル以上の「道路橋」が約15万5000あり、そのうち建設してから50年以上経つ橋は8%を占める。この割合は順次増え、10年後に26%、20年後には53%にもなるとの予想もある。

 また、全国の上水道資産は40兆円あるといわれ、このうち高度成長期に整備された多くの施設が更新期を迎える。そのピークとなる2020年までに毎年約7500億円もの投資が必要になるとみられている。とはいえ、自治体水道局などの事業者のうち、財政的に余力のあるところは少ない。しかも職員の高齢化や不足で更新工事が十分に行われず、進捗(しんちょく)状況はきわめて厳しい。下水道については、上水道以上に状況が悪いという。
 老朽化していく道路や橋、水道などのインフラ更新には今後50年間で合計190兆円もかかるとの国交省の試算もある。

財政の硬直化が進んでいるのが分かります。 現在の歳出構造を見ると、社会保障費、地方交付税、国債費で歳出の7割が消え、残りは3割しかない。 その3割の内訳も、科学技術振興費、防衛費、国家公務員人件費、義務教育の国庫負担分、などでほとんど消えてしまい、公共事業費は4兆円ほどしかありません。 

このように、財政は硬直化しており、さらに高齢化により、社会保障費は毎年1兆円以上の伸び、国債発行残高の累増で、利払い費も、「日本総研の予測」では、平成21年度9兆円の国債利払い費は金利が1%前後で推移しても、平成31年度の利払い費は、17.3兆円に達すると予測されています。 PBの赤字額は現在23兆円にもなっていますが、これは消費税を10%に引き上げたとしても拡大するでしょう。

政府は景気を浮揚させることはできない

以上のような財政の硬直化、財政危機を見ると、財政による景気の下支えは、不可能であると言えます。 昨日フィッチが9年半ぶりに日本国債の格付けを引き下げ、A+にし、見通しをネガティブとしています。今後、国債の海外投資家の保有比率が高まると考えられている、日本にとって、これは大きな問題です。実際、「2017年度には新発国債の50%以上を海外投資家に売らなければならない」という三菱東京UFJ銀行の試算があります。日本の財政を見る海外の目は益々厳しくなっています。 財政破綻は迫っているとみてよいでしょう。

金融緩和も限界を超えて行っており、もっとやれという声もありますが、不可能な話です。 日銀券ルール(日銀の長期国債の保有残高を日銀券の発行残高を超えないようにする方針のこと)を今年中に超えそうですが、そもそも日銀券発行残高自体が膨張しており(GDP換算で約1000兆に相当)、日銀券ルールを守るだけでは不十分なのです。 さらに、これほどの緩和を行っても、効果は見られません。 

これは全く当たり前のことです。 なぜなら、デフレが原因で不景気なのではないからです。 本質的な問題は、「製造業が衰退し、それに替わる高生産性のサービス業が見えていない」ことにあるからです。

「デフレ脱却策としては、政府と日銀の政策協定により、欧米並みの2%のインフレ目標を導入。実質成長率3%、名目成長率4%を「巡航速度」とし、大胆な金融緩和措置を実行する。大規模な法人税減税や投資額に応じた損金算入を認める投資減税も盛り込む。」という自民党のマニフェスト原案は政府が経済成長をコントロールできるという誤った考えに基づいており、荒唐無稽なものです。 このような政策は、確実に財政破綻を引き起こすでしょう。

政府が金融緩和や公共事業を行ったからといって、日本の液晶テレビが国内で飛ぶように売れたり、日本製スマートフォンが世界を席巻することはありません。今の産業構造をそのままにして、前に進むことはできないのです。 それどころか、巨大公共事業のような政策は、今の産業構造を固定することに繋がります。 

政府には景気を浮揚させる力はなく、また、成長戦略のようなものが成功したことはありません。 現場に疎い官僚が考えても上手くゆかないのは当然です。 グローバル化した経済の中で、一国の経済政策で経済成長をコントロールできるはずはないのです。 

結局、政府ができることは、規制緩和などの経済成長への環境整備や、将来不安を取り除く、財政再建でしょう。自民、公明の姿勢は、全く見当はずれのものと言わざるを得ません。 政府は収奪の対象ではないのです。

景気回復は、国民自身が、政府に頼らないという強い意志で、掴み取ってゆくしかありません。  次期衆議院議員選挙は、増税と社会保障の削減をどのように行うのかが争点でなくては、なりません。 なぜなら、これこそが、最大かつ喫緊の課題だからです。 こういう時に、このような、財政破綻を目指すかのような、自公のマニフェスト原案には、失望せざるを得ません。 本質的な問題に正面から向き合ってこそ、未来は開けるはずです。 もう日本を財政破綻から救う時間は、ほとんど残されていません。 政治家の方々には、如何に難問であっても、正面から向き合って頂きたいと、切に願います。

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