自民党が「狂人」になるとき

池田 信夫

むずかしい話が続いたので、たまにはお笑いネタを紹介しておこう。自民党は、10年間で総額200兆円の公共事業を行なう国土強靱化法案を、6月に国会に提出するそうだ。名目は「災害対策」だが、要するに土建業界に金を配って「昔の自民党」の栄光を取り戻そうという発想だ。その教祖は、藤井聡氏。彼の話は、まるで吉本みたいで笑える。


これはアゴラで辻元氏が紹介したものだが、藤井氏は例の中野剛志氏の師匠だ。「京大教授」ということで権威があると思っている人もいるようだが、彼は工学部の教授。話の中身は、経済学部では1年生にも笑われる「原始ケインズ主義」だ。まず何でもいいから政府が金をばらまけという話があり、その理由づけに防災が出てくる。200兆円の国債が消化できるのかという問題には「日銀が引き受ければいい」。それでインフレになったら「デフレが止まって一石二鳥」。

自民党は野党なので、この法案が成立する可能性もないが、こんな荒唐無稽な法案が国会に提出される状況には危惧を抱かざるをえない。今の財政状況で200兆円の国債を発行するという法案がもし成立したら、国債は暴落して財政は破綻し、防災どころか年金も払えなくなるだろう。自民党がこういう危険な法案を出すのは「どうせ成立しない」と思っているからだ。昔の社会党が「非武装中立」を唱えていたのと同じだ。

民主党はダメだが、自民党も野党暮らしで少しは反省して強靱になったかと思えば、できもしないホラを吹いて土建業者の票を集める「狂人」になってしまったようだ。日本の絶望は深い・・・