自民党がもし本気で雇用拡大がデフレ脱却になると考えるのなら菅直人を党首にすればいい

2012年05月28日 12:37

もし、事業が赤字で苦しんでいる会社が、将来の震災に備えビルや工場の設備を強靭なものにする、それに投資すれば社員の仕事も確保でき、遊ばせないですむので、我社の事業は立ち直るという提案があったとしたらどうでしょうか。
一企業レベルではなく国がそうすれば、雇用の拡大が所得を向上させ、景気は回復してデフレからも脱却できるというまことしやかな話が真面目に国会に提出されるようです。報道によると、「国土強靱化で日本を強くしなやかに」という言葉の響きはいいのですが、報道によれば10年間で200兆円を土木や建築に投入しようというものです。


国土強靱化計画は、自民党の「日本の再起のための政策(原案)」に掲げられていますが、この討議資料は、項目が並んでいるものの、なにを目指しているのかがまったく見えてきません。討議するなら、今こそ、理念や価値観、日本の将来像がどうあるべきかから討議すればどうかと思いますが、それが今日の政治の混迷と既成政党の賞味期限切れを象徴しているように思います。

この国土強靱化計画を強く推奨している三橋さんという人のブログでは、「国民の雇用を増やし、『新たな付加価値(=所得)』を創出することで、国民経済のパイを拡大」できるそうです。確かに政府支出を増やせば、GDPが増えることはその通りですが、それは使った政府支出がそのまま上乗せされるだけで、また財政が悪化しそのツケが残っていきます。

そういえば自民党が国会質問で乗数効果の意味を菅前総理に問いただしていましたが、その発想は菅直人前総理の「一に雇用、二に雇用、三に雇用」をも思い出させます。雇用が付加価値を生み出すのではなく、経済活動が活性化し、より高い付加価値を生み出すことが雇用を改善し、また所得を増やすのであって、その逆はありえません。

この三橋氏のブログでは、日本には公共事業アレルギーがあって、それで思い切った財政出動に踏みこめないとしていますが、いくら財政を出動させても結局は経済が立ち直れず、長期の低迷を続け、財政の赤字を積み上げてきた現実を考えれば、公共事業にたいして懐疑的であるほうが自然です。
もし経済を活性化させる公共事業があるとすれば、机上で描いた経済学ではなく、ビジョンとアイデア、またその公共事業によってどれだけの波及効果があるのかを示すです。その個々の政策に対して国民が是非を判断すればいいのだと思います。

もっといえば、政府が促すべきなのは、グローバル経済という逃げ隠れできない現実のなかで、日本が勝ち残っていける産業が生まれてくるための基盤を整備すること、新しい価値を生み出すイノベーションがつぎつぎに起こって来るための政策であって、国土強靱化計画の国家が財政を出動して、経済をつくることができるというのは、国家社会主義の死臭すら感じさせます。
グローバル化と国家社会主義の台頭 : アゴラ – ライブドアブログ :
もちろん「日本の再起のための政策(原案)」には、「『短期のバラマキ』から『将来への投資』へ」も掲げられているのですが、日本の人口問題が日本の経済や社会の維持を困難にすることは誰もがわかっていることであって、投資すべきは直接子供たちに向けて行うべきだと考えます。

いま政治がすべきことは、なににも増して、財政もしっかりしていて将来も安心だ、子どもを生んでもその子の将来は政府もしっかり支えると国民に約束をすること、また新しい時代に向けて、日本が変わり始めているという実感を感じる政策を打つことで、政策の羅列ではなく、新しい価値ある政策を創造することだと考えます。それが民間の投資をも生み出すのです。

政治が考えるべきことは、さらに国債を発行して、回収の可能性の低いところに投資することではなく、民間企業や銀行に滞留しているお金がどうすれば回るのかに焦点を当てることです。現代は、現実のビジネスを知らない政治家や官僚が描いた事業が通用するほど甘い時代ではありません。

今世界は、デジタル革命やグルーバル経済が既存のビジネスの枠組みを壊しつつあり、それに変わる新しい価値をどこが、あるいは誰が生み出せるかの激しい競争が繰り広げられています。それは国内経済についてもいえることです。

「一に雇用、二に雇用、三に雇用」の発想からでは、新しい価値を生み出すことはできず、付加価値の低いビジネスは途上国に移っていきます。もし、「一に雇用、二に雇用、三に雇用」でデフレ脱却できると自民党までもが本気で考えているとするなら、最初の提唱者である菅直人を党首にすればいいのではないでしょうか。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑