財政再建のタイムスケジュールと企業の投資行動

2012年05月31日 00:15

今日、野田首相と小沢一郎氏の会談が行われましたが、野田首相が、消費税増税法案への賛成を求めたのに対して、小沢一郎氏はそれを拒否し、消費税増税法案の行方が一層不透明になっています。 

しかし、私は池尾先生の記事の主張と同じく、政府が財政再建のタイムスケジュールを国民に明示することが、景気回復のためにどうしても必要だと考えます。 ここでは、政策の不確実性が、個人消費ではなく、企業の投資行動の制約になっている可能性について考えたいと思います。


現在の状態は過剰消費

これだけ財政赤字が巨大化してくると、国民の間に不安が生じるのは当然のことでしょう。 最近、それに関連して、2つの重要な記事がありました。 

池田先生の記事「増税で景気はよくなる」には、

不況→バラマキ財政→政府債務の増加→老後の不安→消費の抑制→不況・・・という不安スパイラルに陥っているものと思われる。デフレはその派生的な現象で、予想に織り込まれているので実質的な影響はほとんどない。

と書かれています。

また、その直後の池尾先生の記事「「政策の不確実性」こそが景気回復の障害」の主張は、「将来不安があるために、国民がお金を使わないことが、景気回復への障害になっている」という考え方で、景気回復のためには財政再建の道筋を示す必要がある」という主張です。

しかし、これらの意見には、少しだけ引っ掛かるところがあります。 それは、本当に、将来不安によって、消費は抑制されているのか、という点です。

釣雅雄先生の記事「経済成長の別の視点:過剰消費と年金 」が指摘するように、個人消費は、大方の予想とは逆に伸びています。   
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(釣雅雄先生の記事から転載)

実際、どの年代の消費者が、消費を伸ばしているのか、内閣府の調査を見ると、次のグラフのように、ほぼ、全ての年代で消費性向が上昇しています。 
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(内閣府ホームページから)

注目すべきなのは、高齢者の消費性向が非常に高いことです。 

最近の個人消費(実質)の推移を見ると、リーマンショックで2008年の第1四半期の個人消費が(年換算)298.7兆円だったのが、2009年の第1四半期に287.7兆円に落ち込んだあと、順調に回復して、2011年第4四半期には、302.4兆円にまで回復しています。

一方、賃金を見ると実質賃金は、かなり減少しています。  

つまり、巷で言われる「デフレなので、国民はお金を使わずに貯め込んでいる」というのは全く正しくないのです。 むしろ、実質賃金の低下にも関わらず、国民はかなり無理をして消費を続けていると言ってよいでしょう(しかし、上のグラフを見るように、高齢化が進行しているため、個人消費は今後、あまり期待できないかもしれません)。
 

従って、一部の人たちが、主張する、金融緩和で緩やかなインフレにすることで、消費が拡大し、経済成長が加速するというのは、全くの絵空事と言ってよいでしょう。 すでに個人消費は大きいのです。デフレ脱却後に増税すればよいというのは、この意味で、全く無意味です。  

問題は個人消費ではなく、企業の投資行動への制約

こうして見てゆくと、政策の不確実性の問題は、個人消費より、企業の投資行動への影響の方が、大きいように考えられます。 

実際、企業の資金需要が低迷したままなので、長期金利は低下しています。 これは、企業が投資をしても、リターンが期待できない状況なので、投資をしない、という要因が大きいと考えられますが、その一方、政策の不確実性、つまり財政再建のために増税をしなくてはならないことは確実だが、いつ増税になるのか、あるいは、いつ財政危機が深化して、長期金利が上がることになるのか、増税をした場合、需要はどう変化するのか、といった投資行動を制約する不確実性が大きいので、投資を始められない、という要因も大きいでしょう。 実際、経団連は、25年度までに消費税を段階的に17%に引き上げるなどといった増税の具体的な提案をしています。 これは企業活動を左右する、政策が決まらないことへの、苛立ちを表したものでしょう。

政府が財政再建のタイムスケジュールを明示することが、景気回復への第一歩ではないでしょうか。  

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