6月、日本は動く! --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

6月3日に野田首相と小沢一郎氏が二回目の消費税に関する会談を行う段取りになったようです。ただ、予想では双方の意見は平行線を辿るだろうとされ、もしもそうであれば野田首相は自民党からの協力を取り付け、消費税法案を通す最終選択を行うと思われます。


もう一つ、今週早い時期に大飯原発の再稼動に対して政府が最終判断を下す予定です。橋下市長が敗北宣言をし、滋賀、京都も地元経済界の声に押される中、むしろ、地元福井県知事の冷静な意見を踏まえての決断となりそうです。

大きな決断だと思います。

双方案件とも国民の意見が割れる中での判断ですから、野田総理の決断への覚悟は相当のものだろうと思います。しかも郵政解散をした小泉純一郎元総理の時のように圧倒的に有利な状況ではなく、今回の二つの案件はまさに激しい戦いの中で絞り込まれてきたところであります。

近代日本で国が割れんばかりの中での決断をしたケースとして岸信介のいわゆる60年安保、日米安保条約調印があったと思います。私は生まれていませんから後で種々の読み物などを通じて知ったわけですが、学生運動も第一次のピークを迎える中、東大の学生、樺美智子の死亡事件が発生したり、羽田空港に着いたアメリカホワイトハウス報道官の車をデモ隊や安保反対派が取り囲みヘリコプターで救出した事件、更には岸首相の首相官邸閉じこもりなどあまりにも衝撃的な出来事が多かった中で成立したのです。その際、岸首相は「国会周辺は騒がしいが、銀座や後楽園球場はいつも通りである。私には『声なき声』が聞こえる」と述べ、「安保改定がきちんと評価されるには50年はかかる」という有名な言葉を残しています。

確かに安保をとってみれば60年安保からその50年も過ぎたところにいるわけですが、この50年間の日本の歩みをみれば安保なくして日本の繁栄はなかったかもしれません。また、「声なき声」については消費税増税に政治生命を賭けている野田首相が「繁華街に行けば人が溢れ、消費をしている」といいたいところではないのでしょうか?

重い決断であるほどうまくいくことが当たり前であります。岸首相が自分の政治生命どころか本当の命を賭けてまで推し進めた安保が結果としてワークしたのは日本の国益でありました。野田首相が判断する消費税法案、大飯原発再稼動はご本人の腹はとっくに固まっているのでしょうから、そうであるならばこの二つの選択が日本を必ず引き上げるものでなくてはいけません。

消費税に関してはそれを上げることで日本の財政が健全になるわけではなく、あくまでも手段の一つであります。財政が本当の意味で健全化するには消費税並みの対策をあと2つ3つ併せて行わないと効果はないと思います。

また原発に関しては地元と周辺の温度差が明白に出たのが今回の議論でした。大飯原発の稼動具合をみて今後、他の原発の再稼動リストも上がってくることでしょう。そのとき、政府としてどういう判断をしていくのか、そちらの道筋を早急に立て、国民に分かりやすいエネルギープランを提示することが先決になるでしょう。

つまり、野田首相の責任は二つの判断をし解散総選挙をすることで終わるのではなく、そこから始まるのだという認識を持っていただかなくてはいけないと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。