中国経済の不安、もう一つのアプローチ --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

中国経済に減速感というニュース記事を時々目にするようになりました。GDPについては軟着陸しつつあるという見方もあるものの、貿易統計が悪化し、輸出が明らかに鈍化したり不動産市況の低迷など個別指標では確かに怪しいものも見受けられます。


オリンピック10年説というのがあるそうでオリンピック開催年から10年前後経つと景気が急変するというジンクスがあるようです。ちなみに中国のそれは2018年という事になります(東京オリンピック64年⇒石油ショック73年、ソウルオリンピック88年⇒アジア危機97年、モスクワオリンピック80年⇒ソ連崩壊91年、アテネオリンピック04年⇒12年国家的危機……)。

さて、その中国。経済減速についてまったく別の角度から見てみたいと思います。

社会主義国だったソ連が戦後どのように推移したかみてみると1947年以降二桁成長を続け、50年代も年平均5.23%の高成長率を維持しました。その間アメリカは4.03%でした。60年代に入りようやくアメリカは平均4.41%とソ連の4.12%を逆転し、その後、80年代、90年代とソ連は大減速となりました。また、30年代大不況のとき、ソ連はその影響がもっとも少なかったことは案外注目されていません。

基本的に社会主義特有の計画経済の場合、経済成長の初期においては資本主義経済よりも早い経済成長率を示します。その後、資本主義経済にキャッチアップされ社会主義経済は減速の一途を辿るとされています。

理由は社会主義計画経済の場合、工業投資や軍事支出、インフラ支出などに重点支出され、国民生活の向上やサービス産業にはプライオリティが低いためです。

今日の中国が本格的経済発展を遂げたのは文化大革命が終焉した1976年以降であってインフラ支出や不動産支出の急増は比較的近年になってからです。また、軍事支出の伸びなど旧ソ連が急速に発展したパタンと比較的似た状況が近年になって起きていると考えてみたらどうでしょうか?

例えば鉄道への支出も巨額でありましたが、昨年の大事故を契機にその開発スピードが急速に鈍化しました。

ソ連で起きたことが当てはまるなら中国が共産の一党独裁体制で国民の自由を制約し続ける限り、経済成長は必ず止まるところがきてしまうのです。

そこで対策。例えば不動産ですが、完成在庫が増加し、中小の体力がないところがそろそろギブアップしそうな気配がありますが、これを簡単に変える方法があります。それは今の70年リースともいえる住宅用土地使用権をフリーホールド(所有権)に変えるのです。もちろん、個人所有は共産党の主義主張に反するでしょうからOKにならないかもしれませんが、特例地区を設けて不動産市場の健全化を図るという手法は取れるのではないでしょうか?

また、情報操作。これももはや、国民を搾取する時代遅れの流行らない政策です。上層部が事実を知り、国民は無知というのは経済や国家の成長への妨げ以外の何者でもないのです。これをオープンにすることでサービスの拡大と経済の横への広がりが出てくるのではないでしょうか?

歴史どおりの展開で中国が今の国家体制を継続するならば中国の経済力はこれから大きく伸びず、東南アジア諸国にその経済発展の主導権を奪われることはありえるのかもしれません。中国が長くその経済発展を享受したいのであれば数年以内に大きな改革をしなければグローバル化の中で置いていかれる可能性さえあるかもしれません。それは2018年前後なのでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。