小売業再編の動きが間違いなく急になってくる

2012年06月11日 12:19

週間ダイヤモンドが、スーパーの再編がいよいよ大詰めになってきていることを特集しています。少し前にフジTVからのウォルマートに関した電話取材を受けた際に、日本市場への適応に成功したウォルマートは店舗数を増やす計画を発表しており、さらに日本のスーパーの買収に動いてくるのだろうと言ったのですが、この記事によると、イオンが子会社化した山陽マルナカにもその買収前に対抗馬として動いていたり、首都圏のオーケーにも話を持ちかけていたことが書かれています。
セブン、イオンの“二強”が大攻勢! 「スーパー再編」は最終章へ突入:
再編の引き金となってくるのは、来年3月に中小企業金融円滑化法が期限切れとなることです。おそらく資金繰りに困ったスーパーが吸収されていく流れが生まれてきます。


振り返ってみると、日本の小売業は1974年に施行された大規模小売店舗法の規制を長らく受け、世界の小売業の発展に遅れをとってしまうことの原因ともなりました。規制が産業の発展を阻害する典型的な例でしょう。大店法の名目は弱者保護と消費者保護ですが、いくら小規模な商店を保護しても、結局は商店数が減少しつづけること、また地方の商店街がシャッター通りとなることは防げませんでした。
規模とはかかわりなく、規模の小さい小売店でも、時代変化をとらえ、うまく特徴を出し、顧客を掴んでいるところは今でも立派にやっています。いくら保護したところで、市場の変化に対応できないビジネスは続きません。

1990年になって日米構造協定の外圧でようやく規制緩和され、現在の「大規模小売店舗法」の成立をもって廃止されたのですが、既得権益や票田で動く日本の政治は外圧でもなければ動かないことを見せつけた典型例です。

皮肉なことに、規制緩和の先陣を切ってやってきたトイザらスが結局は撤退するはめ、米国の親会社の100%子会社の日本法人となって残っているのですが、その後に進出してきた仏のカルフールも、英国のテスコも撤退をしています。いくら規模が大きくとも日本市場、とくに日本の消費者の生活文化に適応できなければ失敗するのです。
つまり小売業ビジネスの成否を分けるのは資本力や規模だけではないことを見事に示しました。

このダイヤモンドの記事にあるように、昨年の震災によるバーゲンの自粛でイオンやセブン&アイも2012年2月期の決算は増収増益をだすことができました。しかし、この記事が触れていないのは、イオンのも営業利益率が前年の3.4%から3.8%に改善されたにとどまり、セブン&アイも高収益なセブン・イレブンを抱えながら営業利益率は3.6%に過ぎず、ヨーカドーや百貨店が足を引張っているのでしょう。「エブリデーロープライス」のディスカウント・ビジネスでありながら、ウォルマートが5~6%の営業利益率をずっと維持しているのとは対照的です。

よく小売業の競争力に関しては、規模が大きければ購買で有利になること、つまり規模の格差による効果が強調されますが、経営や仕組みの差による効率性での格差も大きく響いてきます。ウォルマートが買収の話を持ちかけたオーケーは、ウェルマートと同じく「エブリデーロープライス」をうたっていますが、営業利益率は5.6%と、イオンやセブン&アイよりも効率的な経営体質だと言えます。

とくに今後を考えると、国民の所得が増えず、また人口、とくに消費の盛んな労働人口が減少に向かうと、市場のパイは長期的な縮小傾向となるために、小売業間の競争が激化してきます。すでに高齢者の需要を中心にコンビニがスーパーのビジネスを食い、成長が加速してきていますが、スーパー間でも激しい競合がはじまるのです。

商圏がやせ細っていく中で、スーパーの企業合併が進んだのは北海道ですが、おそらく人口減、所得減に見舞われている各地方のスーパーから合併が進んでくるのでしょうが、その流れのなかでますます経営効率の格差が効いてくることは間違いないことです。そして現実は、各地方にも地域密着型で強い食品スーパーの雄はあり、イオンやヨーカドーも競争力で劣っているために手がだせないところもあります。

小売業がより収益力を高めるためには、ひとつには店舗のオペレーションコストを下げる方法と、もうひとつがPBの売上比率を上げていくことですが、各店舗の規格がバラバラで、しかも現場店舗に頼りすぎる日本の多くの小売業では、店舗オペレーションコストを下げることが難しそうですし、PBも開発力に疑問を感じます。

もしイオンやヨーカドーが資金力で行き詰まる事態にでも陥れば、資金力が桁違いに大きい、ウォルマートに飲み込まれることもあり得るのかもしれません。しかしそれも市場のなかでの競争の結果であり、また規制によって保護する政策だけは勘弁願いたいものです。小売業で言えば、大店法の規制がかからなかったコンビニが、発祥の地のアメリカよりも進化し、発展した事実を重く受け止めるべきだと思います。

成長戦略といいながら、農業や医療、エネルギーなどへの株式会社参入に規制をかけている不思議な日本の政治を変えて行かなければ、結局は既得権益のによる足かせがいつまでも残り、期待する成長力や競争力を生み出すことはありません。
利権まみれの政治をやってきた自民党や、政権についたとたんに自民党化してしまった民主党に「改革」は期待できず、まだまだ手がつけられていないほんものの「改革」を進めることができる第三の勢力を国民が育てることが日本復活の条件のように感じ始めた今日この頃です。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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