ホンダ、苦肉の車種絞込み --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

ホンダが最高級セダン、レジェンドとインスパイアの生産を中止すると発表しました。2011年一年間でレジェンドは360台、インスパイアも1000台弱しか売れておらず、日本での販売継続は困難と判断したようです。

これによりホンダは国内においては軽自動車とフィットなど小型乗用車に特化する会社となるようです。


ただ、海外に目を向けると例えば稼ぎ頭の北米では高級ブランド「アキュラ」の冠をつけた車種はセダン4種、SUV2種、クロスオーバー1種あり、更にホンダブランドではアコード、シビックは定番車としてなくてはならない存在です。むしろ、フィットを見かけるチャンスは案外少ないぐらいなのです。

セダンで最も高級なものになれば北米で売っているものはRL(レジェンド)で65000カナダドル(日本円で500万円強)となっています。残念ながらアメリカでは2011年に「10万ドル以下の車種で最も売れなかった車」で1位になっています。

では全般的なアキュラの評判ですが、カナダでは実はまずまずという感じです。理由は全体的なスタイルが前衛的で鋭角で冷たい感じを出していますので好みが割れるということでしょうか? クロスオーバーについては専門家の評価は「中途半端」という評だった記憶があります。

しかしホンダブランドは北米では完全に確立されており、盗難車の上位にランクされ、中古の値落ちも悪くない車です。更にはアメリカではまもなく販売開始されるホンダジェットの飛行機の受注も順調です。

このような中で本家本元の日本で軽自動車、小型車に特化するという流れは私からすれば奇異に感じます。

レジェンドが80年代に発売開始し、91年に一年で19000台販売した実績があるにもかかわらず、20年後に360台しか売れないというのは手っ取り早く売れる商品に力を入れ、市場開発に力を入れなかったといわれてもやむを得ません。トヨタはレクサスブランドを苦労しながらも北米では市場を確立しつつありますし、日本の高級車市場でもその存在感をどんどん高めています。日産もシーマを復活させているのです。

そういう中でホンダの遺伝子を経営効率性を追求するあまりせっかく持っていた遺伝子を落としてしまうのはもったいないと思います。日本で高級車の市場が育たないというのは間違いで単にベンツやBMWをはじめとする海外勢の牙城を崩せないだけなのです。

東京の都心にいればベンツはやたらと目に付きます。80年代は会社の社長車かヤクザの車というイメージでしたが、今やあちらこちらで目にするのは20年間で市場開拓をしたからです。高級車の市場というのは必ず存在するわけで今でも「俺、いつかはベンツに乗ってやる」と思う輩は結構いるのです。

ホンダは夢を与えてくれる会社でした。そういう意味で今回の国内高級車市場からの撤退は至極残念に思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。