アメリカ経済はデフレへ移っていくか --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

注目された6月19日、20日のアメリカの連邦公開市場委員会(FOMC)。結果が発表された東部時間の12:30、それとプレスコンフェレンスの14:15に注目が集まりました。今回は市場の動きを見ている限り、いつもの月に比べ注目度が高かったように思えます。

一つはギリシャの選挙結果やG20を踏まえてということがあったこと、もう一つは踊り場にあるアメリカ国内景気についてどう判断するか、更には秋の大統領選挙に向けてどのあたりに注目しているのかがバーナンキ議長の言葉としてどう説明されるのかという点に絞られていました。


市場の一部ではQE3への淡い期待があったと聞いていますが、私はギリシャの選挙で緊縮財政派が勝利を収め、且、FOMCの終わる前であるギリシャ時間の20日中に組閣を終えたことでとりあえずギリシャ問題は横においておける状態になったと判断したと思います。つまりQE3は間違ってもありえない、と。事実それはなかったわけです。

ギリシャに関しては今後、まだまだハードルを越えていかねばなりません。噂ではギリシャが更なる条件緩和の交渉を持ち出すのではとも言われておりますが、ドイツは表面的にはきっぱりと「それはない」と言い切っています。表面的というのはいざとなれば多少のポケットはあると見ています。

それよりもスペインをどうするかということですが、そちらについてはG20で議論された銀行監督や預金保険制度を共通化する「銀行同盟」を実現化させるかがポイントになると思います。ドイツは反対でしょう。ただ、欧州金融機関全般の安定化という意味では面白い仕組みですが、国家と金融が離反することへの影響は精査した方がよい気がします。

また、本日のバーナンキ議長の発言ではアメリカが無条件にヨーロッパ諸国の国債を買うことはないとしていますからアメリカ/イギリス連合とドイツの枠組みが明白になりつつある点は要注目すべき点ではないかと思います。以前にも申し上げましたが、西ヨーロッパ大陸はドイツが押える方向にあります。フランスのオランド新大統領はリップサービスが多いと評されているようですからドイツのやり方にすり寄って行く気がいたします。

最後にバーナンキ議長の説明から2012年度アメリカ経済成長は前回予想から0.5%ベーシスほど下方修正の1.9~2.4%レンジ、インフレ率も下方修正の1.2~1.7%、失業率は悪化方向に修正する8.0~8.2%とされています。全般にアメリカの景気回復が弱く2014年広範までの超低金利政策は続けることを確認しています。

今後の予想ですが、大統領選を乗り切るために今回延長したオペレーションツイスト以外に今後何か対策を打つ可能性はあります。ただ、これも先日も指摘しましたが、原油価格の下落が顕著になってきており本日は81ドルを割ってきました。歯止めがかからなくなった場合別の問題が生じる可能性があります。アメリカはインフレ懸念からデフレ懸念に移行する可能性も否定できなくなります。金融緩和策は今後効果が期待できない可能性が高いということです。このあたりはバーナンキ議長が一番心配している内容ではないかと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。