違法ダウンロード刑事罰導入は将来に禍根を残す

2012年06月22日 12:11

違法ダウンロードに刑事罰を導入する改正著作権法が成立した。今年10月1日から施行されるらしい。4月のアゴラ記事、民主党が違法ダウンロード刑事罰導入先送りを決めた件 で説明した通り、私はこの法案には反対であっただけに、今回の成立には不満も多く実に残念である。


先ず基本的な考え方であるが、私は「著作権者」や「隣接権者」の権利が無視されて良いとは少しも考えていない。いや、寧ろ堅牢な法制度の下、保護されるべきと思っている。しかしながら、その代償としてインターネットの利便性が大きく損なわれるとしたら、話は全く別である。

ITが今世紀の日本の基幹産業に成長すると信じる程私は楽観的ではないが、そうは言っても近隣アジア諸国に劣後する様な状況は流石に回避すべきと考える。従って、違法ダウンロード刑事罰導入の如きを「結論ありきで」拙速に決めるのではなく、その「得」、「失」を充分に精査した後、業界、国民の意見も踏まえ決めるべきと考えていた。

成程、日本レコード協会公表資料の示すものは業界に取って悲惨極まりない、綺麗な右肩下がりの販売結果である。

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貧すれば鈍すではないが、業界がネットや、より正確に言えば違法ダウンロードを目の敵にしたくなる気持ちは判る。しかしながら、例え刑事罰導入に成功したとしてもCD売り上げがV字回復するとはとても思えない。寧ろ、ユーザーの音楽離れが加速し、売り上げが落ち込むのではと危惧する。

レコード会社は落ち目の自分達の業界に「ネット」を道連れにする様な愚挙、暴挙は慎むべきと思う。そして、一度、商売の原点に立ち返り、CDの価格はそもそも高過ぎないか?、 レコード会社が大好きな凝ったCDジャケット等、ユーザーは特に欲しいと思っていない?、レコード店を訪問する事を面倒臭いと感じているのではないか? 等、彼らの顧客が何を望み、何に不満を感じているのか真摯に自問自答すべきである。

「商流」、「プロモーション」等、この半世紀でメディアの持ち方が「アナログレコード」から「デジタルCD」に転換した以外何一つ変化していないのではないか? 話はやや脱線するが、今回の様に時代の変化への対応を忌避し、結果、放置する企業、業界への政治、行政の過保護こそが長く続く、日本停滞の根本原因と考えるのである。

今一つ看過出来ないのは、大した審査もしないままにこの法案を通過させた、立法府国会の機能不全である。中身の詳細な精査は「法」の専門家の意見を聞くしかないが、素人が見ても刑事司法当局の裁量に多くが委ねられる、お粗末なものに見える。CDの売り上げ回復に全く寄与せず、別件逮捕の口実に使用されるだけではないのか?

5月のアゴラ記事、摩訶不思議な「陸山会事件」で説明した通り、日本の刑事司法には問題山積である。かかる状況下に今回の如き不完全な法を通し、運用を刑事司法に丸投げして何とも思わない言う事であれば、国会は立法府として機能停止、国会議員は脳死と言う事であろう。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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