「電力政策」は政治のオモチャではない

2012年06月28日 13:45

週間朝日の伝える所では、原原発再稼働で「橋下さんはヘタ打った」と大阪府市の元ブレーン・飯田哲也氏との事である。飯田哲也氏のこの主張は、認めるか否かは別として判り易いと言えば判り易い。そして、3.11以降、中央、地方を問わず多くの政治家が、大なり小なりこの手法で支持を集める事に成功しているのも、決して無視できない事実である。

私自身は、橋下さんに幻滅したというより、「センス悪いな」と感じましたね。結果として橋下さんはこれで評価を落とした。官邸はどうせ押し切ってくるのだから、橋下さんは最後の最後まで「再稼働は認められない」と頑張ればよかったんです。それが正しいし、ポピュリズムの見地から見ても橋下さんの人気はもっと高まったでしょう。イメージ戦略から言っても誤っています。橋下さんはヘタ打ったな、と思います。

「原発反対」を「ポピュリズム」の道具、「票集め」の切り札と割り切っている。今更ながらではあるが、感心出来ないのは、どっちみち中央政府は関西地区の電力安定供給に責任を持っているので「押し切ってくる」。最後迄抵抗し、矢尽き、刃折れ、無残な敗北を見せる事で「同情」を獲得する事で更なる人気に繋がると明言している事である。

「産業」、牽いては「経済」全般と「電力安定供給」の関係は、人間の身体と血流の関係に似ている。足の末端等の血流が滞れば「壊死」を招き、結果切断止む無しと聞いている。

関西地区の経営者から聞いた話では、納期遵守への配慮から夏場の停電に備え在庫積み増しをしている製造業が多いとの事である。勿論、これは本来必要のない、「保管料」と「在庫金利」と言った余分の費用負担を発生させ関西製造業の収益を圧迫する。結果、法人税の納税額が減少するのは必然である。

上記は飽く迄当座の遣り繰りであり、中長期的には海外移転を断行する事になる。私は、「製造業の海外移転」は必然と考えている。しかしながら、電力不足、電力料金の値上げ等の理由で急激な移転が起これば副作用は激甚と考えているのも、今一方の事実である。

国家単位で考えれば、3.11以降の化石燃料輸入の増加や、液化天然ガスを長期契約ベースではない割高なスポットベースで調達している事等から貿易収支は急速に悪化している。

一方、海外投資先からの配当、移転収支は堅調で何とか貿易収支の赤字を補い「経常収支」段階で黒字に持って行っている状況である。片肺飛行と言っても良いかも知れない。

しかしながら、仄聞する所、多くの企業経営者は最早日本に左程興味は無く、海外で得た利益を日本に還流するのでは無く、更なるフロンティア市場への再投資に移行しているとの話である。

具体的に言えば、タイでの投資に成功すれば、利益を日本に還流するのではなくベトナムに再投資し、ベトナムで成功すれば更なるフロンティア市場であるミャンマーに再投資すると言った具合である。ROIを基軸に投資戦略を立案すればこう言う事になるであろう。

この結果は明らかである。今後、移転収支が減少し「経常収支」段階で赤字に陥ると言う事である。そうなれば、現在の様な10年物で金利0.82の如き異常な国債の低金利は有り得ないと思う。金利が上昇すれば少々消費税を増税した所で全て利払いに消化されてしまうのではと危惧する。

一方、地方のダメージはより具体的で重篤と想像する。企業が海外に移転すれば従業員も併せて出て行ってしまう。下請け、孫請けも一緒に出て行くか廃業するしかないので、嘗て在った地域の「サプライチェーン」がすっぽり抜け落ちてしまい、残さされたものは抜け殻と企業から解雇された失業者のみとなる。

失業者は当然生活保護受給者予備軍である。税収の激減と社会保障費の激増が予想される。多くの地方行政が夕張同様財政破綻に追い込まれるのではないか?

「電力政策」を弄ぶ事が決して国と国民の利益にならない事を、もう良い加減日本国民も理解すべきと思う。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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