レガシーメディアは生き残れるのか?

2012年06月29日 07:54

産経新聞の伝える所では、「マードック帝国」分割 米ニューズ、娯楽と新聞・出版部門との事である。

「メディア王」ルパート・マードック氏率いる米ニューズ・コーポレーションは26日、自社を2つの上場企業に分割することを検討していると発表した。米メディアによると、全売上高の75%を占めるテレビや映画などの娯楽部門と、新聞・出版部門を切り離す見通しという。数年前から、収益で劣る新聞・出版部門の分離を模索する動きはあったが、傘下の英日曜紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドが盗聴事件で廃刊したことを受け、株主から分社化要求が強まっていた。

分割発表を受け、ニューズ株は26日の米株式市場で前日比8%強上昇した。

分割と言えば聞こえは良いが、実質は儲からないし前途の展望が見えない新聞・出版と言った「紙媒体」を本体から切り離す事であると推測する。それにしても驚かされるのは、この報道のみでニューズ株が何と8%強も爆上げした事である。市場の好感は実に大きい様である。

考えてみれば当然の話かも知れない。今世紀は間違いなくインターネットの時代である。テレビや映画と言った映像メディアはネットとの親和性が良い。Yahoo!映画GyaO!は好例であるが、新作の映画やテレビドラマを紹介したり、或いは旧作の有料ダウンロードを可能にしている。優れたプロモーション媒体であると共に、しっかりコンテンツ商流の一翼を担っている。

これに比べ、新聞・出版と言った「紙媒体」はどちらかと言えばネットを敵視し、ネットに取って代られる事の防戦一方で、映像メディアの如く如何に取り込むかに頭が行っていないように思われる。

実例を挙げてみる。先ずは、5月のアゴラ記事、「自炊」代行訴訟で作家側が「実質勝訴」して問題は決着したのか?で説明した自炊業者の抑え込みである。結果、読者が手間暇かけて自分で自炊するか、或いは、本を従来同様保管するかしか可能性が無い訳であるが、どちらも結構厳しいのでは? 結果、書籍離れが加速すると思う。

一方、毎日新聞記事、著作隣接権:出版者に付与を 作家、議員らの勉強会に依れば来年の次期通常国会での法制化が実現しそうである。結果、電子出版は既存出版者の独占となり、彼らは本音では紙の本を出版したい訳であるから、結局何の事はない、大山鳴動してネズミ一匹、電子出版は話だけになるのではと思う。

最後は、同じく毎日新聞記事、活字文化議連:新聞・出版物に「軽減税率」適用をである。

超党派の国会議員でつくる「活字文化議員連盟」(会長・山岡賢次前国家公安委員長)の総会が20日、国会内で開かれ、消費増税に伴い特定品目の税率を低くする「軽減税率」を新聞・出版物に適用するよう求める声明を採択した。

率直に言って貧困層支援として食料品に「軽減税率」を適用すると言うのであれば理解出来るし、賛同する。しかしながら、朝の4時に静寂を破り排気ガスを撒き散らしながら配達する新聞を何故優遇せねばならないのか意味不明である。電子化に抵抗し、読者の利便性を考えようともしない出版社に就いても同様である。

どうやれば野垂れ死にする事なく生き残れるのか、自分の頭で考える事が出来ず、思い余って政治に頼るのは判らないではない。しかしながら、政治が出来る事は精々今日の死を明日、明後日に伸ばす事位である。

ネットを敵視するのではなく、巧妙にWin-Winの関係を構築するしか方策はないのではないか? これの出来ない、或いはやろうともしないレガシーメディアの生き残りは極めて困難である。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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