法人事業税を拡大せよ

2012年07月15日 13:55

橋下市長との議論の続きだが、ツイッターで続けるにはややこしい話なので少し補足(テクニカル)。


消費税の地方税化は、全国一律では自主財源にならないし、道州ごとに違うと山田真哉氏も指摘するように納税事務が異様に複雑になる。アメリカで州ごとに消費税率が違っても大した問題がないのは、州際取引には州税がかからないからで、日本には適用できないだろう。

それより大阪の直面している危機は、パナソニックとシャープが合計1兆円もの赤字を出し、いつまで日本にいるかわからないことだ。シャープは鴻海に買収される可能性が高いが、この場合、鴻海が台湾の3倍の法人税を払って日本に拠点を置くとは思えない。パナはすでに新規採用の8割を海外で採用しており、新しい工場はアジアに建設している。本社もいつまで門真にあるかわからない。

大阪がアジアとの都市間競争に生き残るために、企業の負担軽減は緊急の課題である。ところが橋下氏は、この点では珍しく「平等主義」だ。

地方のインフラ整備が公平に行われ競争の土俵が整わない限り、法人税の全額地方税化は、消費税の地方税化よりも政治的に無理な話。大阪にとってはありがたい話だが日本国家が持たなくなる。消費税を全額地方税化した上で法人税の国税地方税分の見直しに、地方税化された消費税をスワップさせればよい。

「政治的に無理」かどうかでいえば、消費税の地方税化も地方交付税の廃止もいい勝負だろう。政治的に実現可能な範囲でいうなら、法人事業税を増やせと要求してはどうだろうか。野口悠紀雄氏の指摘するように、2008年度の税制改正で、財源に困った財務省は地方法人特別税という国税(!)を創設して地方から2.6兆円の税源を取り上げ、自治体に再分配することになった。野口氏はこう書いている:

戦前の日本は地方が財政的に独立しており、自主性が強かった。ところが1940年度の税制改革で所得税の強化と法人税の新設がなされ、それらを財源として地方税制調整交付金制度が作られた。これによって国税の一部を地方に交付し、地方団体間の財政力の調整を行なうこととした。こうして、地方が国に依存する体制がつくられた。

法人税は戦時体制で地方の財源を奪うために創設されたものであり、橋下氏の闘っている中央集権行政と地方交付税によるバラマキ再分配の元凶なのだ。彼は「地方偏在性の高い法人税を地方税化すれば都市部以外は終わり」というが、終わらないためには地方都市は必死で事業税の税率を下げ、企業を誘致するだろう。その結果、人口が都市に集中することは、日本がアジアとの競争で生き残る上では望ましい。

今後の都市間競争で重要なのは、工場ではなく本社機能である。半導体の工場はアジアに移転しても、本社機能さえ日本にあれば付加価値を生み出すことができる。エルピーダのように、本社がアメリカに買収されたら何も残らない。手遅れにならないうちに、政治的に無理のない目標として、地方法人特別税を廃止して法人事業税に戻し、自治体の自主財源を増やすように要求してはどうだろうか。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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