生活水準を下げ、国民は自立しよう

2012年07月25日 08:57

日本経済の活性化のために政府に対策を求める国民の声は強い。

日本経済に実力があるのに、財政、金融政策など政策の失敗で、日本経済が実力に見合った水準を下回っているなのなら、政策の転換が望まれるが、もし、日本経済の現状が、現在の日本経済の実力に見合ったものか、それ以上であるのなら、政府の政策に期待することはできない。 

果たして、日本経済の実力とはどれほどのものなのだろうか。


日本経済の現在の実力はどれほどのものか

このように、政府の政策に期待する前に、現在の日本経済の実力を確認する必要がある。

まず、日本の労働生産性を見ると、下のグラフのように94年以降、先進国では最低、OECD加盟34か国中20位(2011年)である。 

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(ダイヤモンドオンライン「生産性向上が求められるオフィス変革」から転載)

しかも、生産性の高いのは、今まで日本経済を牽引してきた製造業であり、日本のサービス業の生産性は低い。 今、その製造業が苦境に立っていることを考えると、サービス業の生産性の上昇は急務である。

また日本の一人当たりGDPを見ると、USドル換算の名目値で2010年の時点で17位で先進国最低、購買力平価換算でみると2011年の時点で、世界24位であり、台湾(20位)より下である。

一人当たりの名目GDP(USドル)の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳

一人当たりの購買力平価換算のGDP(USドル)の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳

このように、労働生産性、一人当たりGDPで見ると、日本の国力は世界の中では決して高くない。 時間軸を長く取って一人当たり名目GDP(ドル換算)の推移を見ると、日本はリーマンショック後の、ドル安、ユーロ安のために盛り返しているものの、実質的にはドイツ、フランスよりも下だと考えてよい。

このように現在の日本経済の実力は、世界の中では、決して優れたものとは言えない。 日本経済の不振の原因は、デフレだからではない。日本経済が不振なのは、実力がないからである。 過去を振り返ると、実はバブル期においても日本経済の実力は十分とは言えなかったし、経済大国というのは幻想に過ぎなかったと言えるだろう。

国民に優しい政府が国を滅ぼす

一方、国民の生活はどうだろうか。 失業率を見るとアメリカの8%、フランスの10%と比較して日本は5%程度で高くないし、治安も保たれている。これは何故だろうか?

これは、実質的に破綻している企業を政府が、信用保証制度で支えていることが一因である(「続、信用保証制度の終焉」参照)。

そして何より、バブル崩壊後、国債を発行して、財政出動を繰り返し、経済の下支えを行ってきた。税収が落ち込んだにも関わらず、増税や歳出削減をせずに、財政再建を先送りし、国民の生活水準を政府は支え続けてきたのである。それどころか、子ども手当などのバラマキ政策までやって来た。

このように、政府は国民の生活水準を支えるために、あらゆる施策を講じてきた。その結果が、先進国中最悪のGDPの2倍を超える1000兆円を超える政府債務である。それでも、政府、日銀の無策を非難する国民が多数いるが、これはどうしたことだろうか。 私には理解できない。 

いや、それどころか、こういった国民の不満に政府が応えることが、却って問題を大きくした。信用保証制度により、破綻すべき企業が存続したが、これは産業構造の転換を妨げた。

家電エコポイントや、エコカー減税、地上デジタル放送への移行などの、需要拡大策は、政策終了後の反動を大きくし、さらには、企業の変革を結果的に妨げた。 実際、2012年3月の決算で、日本の電機メーカーは巨額の赤字を出し、将来が非常に危ぶまれている。

政府による需要の下支えは役に立たなかった。必然的に起こる変化を先送りしても、問題の解決にはならないのである。 

国力に見合った生活水準に

現在の日本国民の生活水準は、国民に優しい政府により、本来あるべき水準より高くなっている。つまり、日本国民の生活水準は、その国力に見合った水準より高いと考えられる。 

現在、行うべきは、増税の先送りや財政出動などの景気対策ではなく、増税、社会保障の削減といった、国民の生活水準を下げる政策ではないだろうか。起こるべくして起こる変化に抵抗しても、事態は、より悪化するだけだ。 

生活水準を下げることは、恐らく多くの国民の望む方向ではないかもしれない。しかしながら、私には、日本国民の生活水準を下げることの必要性を、冷徹な論理が指し示しているように思われる。

国力より不当に高い生活水準を維持しようとすれば、やがては財政破綻といった暴力的な形で、生活水準が下げられることになる。 我々がやるべきことは、日本経済の実力を自ら上げることであって、問題を先送りすることではないはずだ。

今まで、日本国民は、政治について当事者意識があまりにも薄かったし、それは今も変わらないように見える。 実際、現在、資源や海洋覇権を狙って、中国の海洋進出が顕在化しているが、そのことについて、日本国民の当事者意識は非常に低く、基地問題、オスプレイ配備の問題を見ても、如何にも近視眼的な論調が目立つ。もう少し、世界戦略を見据えた俯瞰的な視点を、国民が持つことが必要だろう。

日本国民が、当事者意識を取り戻し、自立することなくして、日本の衰退は止まらない。 今ほど、国民の自立が求められている時はない。

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