日本経済は企業の合従連衡を進め足場を固める時 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

人間にバイオリズムがあるように景気にもサイクルがあります。そのサイクルは経済学的には大、中、小の三つぐらいのサイクルが絡まりあうようになっているとされています。サイクルですから当然、よいとき半分、悪いとき半分ぐらいの感覚ということになります。

日本は90年代から下向きの大きなサイクルに入っていて時々小さいサイクルが上向きを示したりしていました。いまだに下向きですが、私は打たれ強くなったと思っています。今後悪くなっても知れていると思います。


欧州は長らくよい時期が続きましたがリーマン・ショック以降、ユーロシステムの問題が明白になり、ギリシャ問題を始め、昨今のスペインの問題は相当厳しいところまで来ている感がいたします。更に格付け機関ムーディーズがドイツ、オランダ、ルクセンブルグの見通しをネガティブに変更しました。ユーロ安がドイツの輸出産業にはフォローの風だとしても稼いだ資金が南欧諸国の救済に吸い取られるとしたら確かに微妙な感じはいたします。

その上、ユーロ圏からの資金流出というニュースも伝わり始め、まさに混沌とした状況に陥ったといえそうです。

一方アジアに目を向ければインドではスズキの工場での暴動を始め、インド経済の加速度的成長に疑問符がつき始めています。中国は私のブログで先日指摘した「怪しい統計」がその後、さまざまなメディアで取り上げられ、何が本当なのか、全くわからない状況にあるような感じがしてまいりました。中国に進出している日系企業は本当に儲かっているのでしょうか? 私には疑問があります。

ずいぶん前ですが、カナダに進出している日系企業は儲かっているのかという質問に、某日系銀行の方がこっそりと「8割は赤字」と教えてくれたことがあります。カナダは世界でも特にビジネスが難しい国の一つとされ「ここで利益を出せれば世界何処でも儲かる」と言われたことがあります。理由は人口密度が希薄、住宅ローンが重く、ローン後の可処分所得が低い、イギリス式の消費に対するコンサバさなど。確かにアメリカ人の金離れのよさはカナダでは余り見られません。

一方で日本の問題は企業の数が多すぎるということだと思います。過度な自由競争が引き起こした悲劇に近いものがあります。携帯電話のキャリアーは現在主要3社ですが、程よい寡占で各社利益を確保しながら価格崩れを起さない程度に価格競争をしています。では自動車。何故、いまだにあれだけの数の自動車会社が必要なのかわかりません。国内は半分程度の3~4社ぐらいで十分なはずです。つまり淘汰されたほうが結果として日本経済全体にプラスになります。

日経ビジネスの経済教室でコマツの坂根正弘会長が国内で建機を作り国内で販売するのが一番儲からないと指摘しています。競合と過剰サービスコストだと思います。

日本が儲からない理由がその日本独特の商習慣とシステム、過剰競争にあるとすれば改善の余地が大いにありますから世界経済が更に下を向いてもまだまだ生き延びることが出来る、と私は逆説的に考えています。但し、日本企業の海外進出についてはしばらくは足場固めの時期にありますから私は商機拡大より守りに入っておくべきかと思います。景気の波は何時までも下を向くわけではありませんから回復を確認してから攻めの姿勢に入っても十分間に合うと思います。

世界を俯瞰する限り、正直、目先は厳しいという言葉が一番適切ではないかと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年7月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。