繰り上げ返済は本当にお得なのか? 前編

2012年07月30日 07:00

猫も杓子も繰り上げ返済だ。家を買って住宅ローンを返済中の人はもちろん、これから家を買う人も住宅ローンを借りる前から繰り上げ返済を考えている。毎月○万円を返済しながら毎年100万円ずつ繰り上げ返済をすれば、当初の予定より○年早く返済が終わる・・・といった形で繰り上げ返済を前提に返済プランを考える人も少なくない。

これ自体は間違っていないし、正しいやり方でもある。長期で借りて毎月の返済額を抑え、その時々の都合に合わせて繰り上げ返済を行う。利息負担も減らせるのでなんら問題は無い。しかし、実際にこのような返済を実行している方は、繰上げ返済の影響、より正確にいえば「繰上げ返済による悪影響」が何年先まで続くか?という問いに答える事は出来るだろうか。


細かくは返済プランによるが、「返済期間終了近くまで続く」というのが正解だ。長期のローンを組んでいる人ならばそれだけ長期間、悪影響が続く事になる。

最近は『「持ち家と賃貸はどっちが得か?」とか「家賃を払うのはもったいない」とかいまだに言ってる不動産業者やファイナンシャルプランナーは、相当ヤバイ』をはじめとして、持ち家のリスクを強調した記事ばかり書いているせいか、自分は持ち家反対派と誤解されてしまっているようなので(実際は中立派)、今回は家を買った人、あるいは買いたい人に向けた話を書いてみたいと思う。

繰り上げ返済は利息負担を減らす手段の一つだ。借り入れの前であれば頭金を増やす、あるいは借入額を減らす事がもっとも利息負担を減らす効果が高い。次に効果があるのが返済期間を短くする事だ。返済が始まれば、借り換えを除くと繰上げ返済は利息負担を減らす唯一の方法となる。

一般的な繰上げ返済は期間短縮型と呼ばれる。返済残高が減り、返済期間も短くなる。この二つの効果で利息負担を大幅に減らす事が出来る。毎月の返済額は変わらない。

もう一つが返済額軽減型だ。こちらは借入残高だけを減らして、借り入れ期間の短縮は行わない。その分だけ利息軽減の効果は期間短縮型よりも少ないが、毎月の返済額が減るので資金繰りは楽になる(金融機関によっては期間短縮型しか対応していない場合もあるので、これから借りる人は注意されたい)。

繰り上げ返済による悪影響とは、資金繰りの悪化だ。これは手許現金が減るリスクだから、企業会計で言うとキャッシュフローの悪化となる。

たまに企業が利益を出しているのにつぶれてしまう、黒字倒産というものがおきる事がある。企業会計では発生主義と言って、取引が発生した時点と現金のやり取りが行われた時点を分けて考える。つまり、売り上げはたっているのに回収に時間がかかり、支払いや借金の返済が先に来てしまうと手許現金が無くなり、支払いが出来なくなる=倒産、といった事が現実に起きうる。

確実に回収が出来るならば支払いを待ってくれるだろうが、仕入れや設備投資に資金をつぎ込み過ぎた場合は資金繰りが止まる=ショートによって倒産となる可能性が高い(細かい話になるので説明は省くが、仕入れや設備投資にお金を使っているなら赤字になるのでは?と思う人は利益がどうやって計算されるのか、簿記の資格を持っている人に聞けば分かる)

これは家計でも考慮すべきリスクで、利息負担が減る=利益になるからと繰り上げ返済をやりすぎると「黒字倒産」、つまり家計の破綻が起きる可能性が高まる。なぜなら繰り上げ返済による利息軽減の効果が出るのは返済期間終了間際で、それまでは悪影響しかないからだ。

したがって、万が一に備えて手許現金はある程度確保した上で繰り上げ返済をすべきだ。ここまでは常識と言っても良いだろうが、先日読んだ繰上げ返済に関するとある記事では、そういった話に一切触れず、繰り上げ返済は最強の投資だ、こういうプランで繰り上げ返済をすると100万円も確実に浮く、いまどき確実に100万円儲かる投資なんてほかに無い!などと説明されており、呆れてしまう内容だった(これもファイナンシャルプランナーによる記事。素人でも分かる穴だらけの情報発信はFPの地位低下につながるので本当に勘弁して欲しい)

どれくらい手元資金を確保すべきかは人によって意見が異なる。生活費の3か月分で良いと言う人もいれば1年とか2年と言う人もいる。ここは厳密に計算してもいいのだが、ある程度大雑把に最低でも1年分、子供が居れば1.5~2年分以上と考えて問題は無いだろう。もちろん、もっと沢山あるなら多ければ多いほど安心だ。

買うかどうか迷っている方には、持ち家と賃貸の比較に関する以下の一連の記事が参考になる。
●持ち家は資産か? 持ち家に関する二つの幻想
●そろそろ決着をつけたい「持ち家と賃貸はどちらが得か?」というくだらない論争
●「持ち家は資産だ!」という反論が来た(謝罪も有り)
●リスクとの付き合い方 持ち家議論へ頂いた反響への回答

住宅の購入を検討されている方には以下の記事が参考になる。
●住宅購入に関する記事のまとめ。
●小学生でも分かる住宅ローンの計算方法 
●住宅購入における予算の決め方 その1 その2
●「持ち家と賃貸はどっちが得か?」とか「家賃を払うのはもったいない」とかいまだに言ってる不動産業者やファイナンシャルプランナーは、相当ヤバイ その1  その2
●9割も売れ残る新築マンション ~空室率40%の時代に備えて~

次回は繰り上げ返済によって資金繰りはどれくらい悪化するのか、そして利息軽減効果はどのように発生するのか、具体例を示しながら説明したい。

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長
ファイナンシャルプランナー
シェアーズカフェのブログ
ツイッターアカウント @valuefp

中嶋 よしふみ
ファイナンシャルプランナー シェアーズカフェ・オンライン編集長

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