シャープ、一本足打法からの遅過ぎる卒業 --- 岡本 裕明

2012年08月04日 08:00

今、私は株価ボードを見ながらこのブログを書いています。東京時間の金曜日朝の寄り付きで何よりも注目されたのが家電三社の株価。日経新聞では御三家(パナソニック、ソニー、シャープ)についてその回復具合のニュアンスをパナが○、ソニーを△、シャープが×というぐらいの尺度の記事にしています。今日は相場の地合いが悪いこともありますが、10時00分現在でパナが-3.4%、ソニーが-6.8%、シャープは-27.7%と日経新聞の評価通りの下げ方になっています。もっともパナは業績回復途上にあるため、今日、これだけ下げている理由は別のところに理由があります。


さて、ソニーとシャープの下げは醜いという表現が一番正しいと思います。そのシャープ、毎日新聞には奥田隆司社長が「液晶からの一本足打法からの脱却を狙う」とあります。私は過去10数年間、日本は経営を間違ってきたと指摘してまいりました。シャープがようやくその間違えを認めたか、と思っています。

バブル崩壊後、90年代、日本は本業回帰という号令のもと、海外、不動産、派生事業を次々と閉鎖し、強みのあるものに絞り込み、そのもてる力を集中する方策を採りました。結果としてオンリージャパンの技術が生まれた土壌を作ったともいえます。一方で海外での足がかり、新規事業への躊躇を含む小ぶりで枠からはみ出せない日本企業の体質を作り上げたともいえます。

本業回帰は日本のメガバンク主導の債権者都合の政策だったはずです。しかしながら、それがいつの間にか正しい経営方針というニュアンスに取って代わり、多種の業種に進出していることが世の中の趨勢に反しているとでも言われないばかりの状況になっていました。

一方、「一本足打法」はその一本が倒れたらおしまい、という最大のリスクを抱えることを封印し、危機が来れば総力を結集して乗り越える、という発想がバックボーンに合ったと思います。

本当にそれは正しかったのでしょうか?

私は大いに疑問を感じています。

私は現在6本の事業を運営しています。どれも一定の成果を出していると思います。しかし、世の中の状況は何時急変するか予見できません。そのときの私のボトムラインは何処にあるかといえば「ダメなものは切り落とす」という単純な割り切りであります。つまり、六分の一のビジネスを売却なり閉鎖なりしたところで六分の五は残っているので会社全体としての影響は軽微である、という考え方です。

この割り切りすぎるぐらいの発想は欧米ではごく普通で自分のビジネスにしがみつきすぎることなく、安定経営とリスク回避をそこに持たせていると思います。

しかし、シャープのように液晶とともに心中する勢いですと経営者のパッションは理解できますが、リスクヘッジが全然効いていないわけで私は恐ろしくて近寄ることすら出来ません。

実は日本には「本業回帰」や「一本足経営」をしている会社は多く、結果として時代の流れの急変に対応できなくなっているところが多くなっています。例えば任天堂は据え置きゲーム一本でここまで快走してきましたがゲーム環境が携帯/スマホに移行するに従い、厳しい状況になってきています。同社は当然ながら時代の要請を受けた変化をしていくことになりますが、今までは「時代を先取りする会社」がいまや「時代を追う会社」に変貌したわけです。

この違いを明白に捉えればどういう会社が今後生き残れるか、そのオプションの数がものをいう時代だということに理解いただけると思います。

私は常々、いつでも売却できるようアセットは軽く、というスタンスを貫いています。時代のトレンドがそんな感じに見えるのは私だけでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年8月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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