第1章-2 日本のワイドショー向きとなったKrugman

小幡 績

ちなみに第1章というのは、彼のEnd This Depression Now! の本の章立てである。

それに即して、いちいち私が批判している。

私もヒマだ。


第1章は、雇用が大事だ、と書いた後は、何の意味もない話。

失われたお金は戻ってこない、失われたとは、失業と同じで、余剰労働力と余剰設備の分は遊ばせておいたから、その無駄は永遠に取り返せない、と言う話。まあこれはケインズに沿った話で、重要なところだが、いまさら強調するまでもない。

その後、苦手な欧州の話になり、誤った議論を展開している。

彼は米国の話しかよくわからない、と自ら宣言しておきながら、欧州の話をして、間違いを語っているから、まあ彼にしては善良な方か。

欧州と米国の違いは、スランプに陥ったフロリダやネヴァダ州では、人々は健康保険の心配はないが、欧州は、通貨統合をしながら財政統合をしていないから、フロリダみたいなアイルランドや、ネヴァダみたいなスペインは、財政破綻ともなり、スパイラル的に崩壊してしまう、と述べる。

この比喩は不動産バブルにまみれたところ、という意味だろうが、ネヴァダとスペインは大分違う。不動産バブル以外にもスペインは問題があり、そちらが本質だ。不動産バブルを解決しても後が見えないのがスペインの問題。下手な比喩は誤りだ。

しかし、さらに大きな誤りは、スペインの財政破綻の問題はむしろ、国内が財政統合されていることによる。政治的に地方政府は歳入を中央政府に頼り、弱い地方は赤字垂れ流しで、これがスペイン財政が回復しない理由。だから、欧州が財政統合すれば、スペインやギリシャは、ますます財政赤字を垂れ流すだろうから、実は財政統合していない方が、欧州全体としては傷が浅い内に改革に向かえるので、むしろ良いのだ。

だから、これは180度誤りだし、政策提言としては、世界をむしろ悪くすることを示唆しているから、非常に罪深い。

そして、最後には、ヒトラーの話。

これは、日本のキワモノ評論家も真っ青。不況はヒトラーを生むから、はやくこの不況を終わらせろと。

あほだね。

ヒトラー誕生のメカニズムも知らずに、とにかく過激な発言をして気をひこうということだが、日本のワイドショー向きだが(しかし、日本の視聴率の高いワイドショーはこういうインチキ発言は見抜くので採用されないだろう。数字のとれていないワイドショー向きか)、まあハードカバーの本で、こんな話を聞くのはうんざりだ。

日本語版は読んでいないが、英語版は ! がやたら多い。

!を使うと、インチキに見えて、説得力が下がるから論理的な文を書くときは使うな、と学校で文章の書き方として習ったが、ということは、この本に論理を期待した私が間違いだったということか。

タイトル見ればわかったのだが。