凡庸なKrugman 第三章 The Minsky Moment

小幡 績

Minskyの名前が出てくるが、ほとんど関係ない。

正確に言うと、関係なくもないが、彼の名前を出すまでもない。

要は、deleverage が起こると、景気が悪くなるよ、ということだ。

でも、金融は機能不全に陥っているから、抜け出す手段は

1.借金棒引き

あるいは

2.借金返済で消費を減らし、貯蓄している人々の代わりに、借金をして消費をする、つまり、政府の財政出動!

これしかない。

ということだ。

ねえ。もう飽きましたよね、みなさんも。


Irving Fisherの

「借金を返済すると、借金は増える」 (The more the debtors pay, the more they owe.)

を文字って、もっと自分が格好良く現代用に言い換えたのは

「債務者はカネを使えないし、債権者はカネを使わない」 

というものだ。と言っている。

投資に失敗したのだから、借りた方も貸した方も、それはトラブルになって、余裕はなくなるわな。引用するのも無駄だったか。

さて、せっかくだから、多少知的な話もすると、

① Krugmanの暗黙の前提で誤っているのは、グローバル化、ということだ。

何を今更、と言われそうだが、そこが実は致命的で、彼の議論が現実の政策へのインプリケーションとして意味がなく、無価値なだけでなく、正反対の方向を示していて危険なのは、ここにある。

誰かが消費すれば、それは必ず誰か(仲間、同じ経済の中の)の所得になる。だから、どれだけ借金しようと関係ないんだ、と言っている。

これも、日本の国債は国内だから、という議論と似ているが、決定的に違うのは、米国人が借金して消費しても所得は海外に流出するのだ。言うまでもないことだが、これをあえてkrugmanは無視している。マクロ経済学の小学生向け教科書にも書いてある。オープンエコノミーでは財政政策は効かない。

この誤りは、実は致命的だ。

逆に言うと、現在が大恐慌と違うのは、世界は西洋だけでなく、新興国が世界中に散らばっている、ということだ。そして、そこには需要があり、生産もされていると言うことだ。

② krugmanは今の大恐慌は、1930年代の大恐慌と当然同じだから、ケインズが提案した同じ政策が効く、そして、1930年代当時と同じく、政権や自称有識者は、みんな誤る、という主張をしている。しかし、なぜ今が1930年代と同じと言えるのか。そこに問題がある。

これは、今更言うまでもなく、散々、まともな人々の間でリーマンショック以後議論されてきた。なぜあえてKrugmanが無視するのか、意味不明だが(知的な作業はもはやどうでもいい、ということにしか見えないが)、現在は金融政策があり、財政政策があり、ともに拡張的であり、同時に、1930年代のグローバル経済とは、西欧と米国だけだったが、現代は大きく異なる、ということで、現代は1930年代とまるで違う、ということだ。

そもそも米国でデフレも起きていないし、GDP成長はそれなりに戻った、ということは明らかなのだが。