人口抑制を如何にして実現するか

2012年08月07日 06:07

日本では少子化問題が社会保障制度の維持の面から、問題視され、大きく取り上げられている。しかし、世界規模の地球環境、持続性という視点から見ると、一人当たりの二酸化炭素排出量の大きい、先進国の人口減少は、望ましいことのように思われる。

ここでは、現在、人類が直面する人口爆発問題の、穏便な解決のためには、先進国の少子化を歓迎し、世界の平準化を進めることが必要であることを述べたい。 


低下する先進国の成長

ここ30年ほどの各国の実質経済成長率を比較すると、先進国の実質経済成長率は、近年ほとんど同期しており、日本の成長率は、人口動態を考慮すれば。先進各国の中で必ずしも低い成長率ではない。一方、新興国の経済成長率は高い。

実質経済成長率の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳

これは、先進国経済が抱える課題が驚くほど類似しているからである。 つまり、グローバル化と情報化で新興国へのアウトソーシングが進んだ結果、国内の雇用が失われ、経済成長が鈍化した。 その一方で、世界人口の増大、新興国の工業化により、資源、食糧といった一次産品の価格は上昇し続けており、貧困層の生活を脅かし始めている。 特に、今年のアメリカの大旱魃により、トウモロコシ、大豆の穀物相場は史上最高値を記録しているが、温暖化など気候変動により、食糧の不足が続くことも十分に考えられる。 
 
先進国の少子化 

日本の出生率は2010年時点で1.39である。一方、出生率の推移を国別に見ると、先進国においては、ヒスパニック系の出生率が高いアメリカを除くと出生率は下がっている。 ヨーロッパでは少子化対策の進む2.0前後のフランスを除くと全般的に低くなっている(人口の維持には出生率は2.1程度必要である)。
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生活の近代化は、子供を沢山持つより、生活を楽しむことを優先させる傾向を強め、出生率を下げるということが言えるだろう。日本の事例を見ても、東京の出生率は1.00前後しかなく、出生率の高いのは島嶼部など地方である。

2010年の時点で、韓国の出生率は1.15、台湾では0.909となっており、日本を凌ぐ少子化が起きているが、これは経済発展が少子化を促すことを伺わせる事例として興味深い。

さて、これから、先進国の経済が長期的に停滞、もしくは縮小することを考えると、低い出生率は続き、長期的に人口は減少してゆくだろう。 なぜなら、沢山の子供を持つことには、コストが掛かり、生活水準を維持しようとするインセンティブが働けば、子供を持つことに慎重にならざるを得ないからである。 

生活の近代化した現在、出生率を上げることは、子供を持つことに、余程のインセンティブを与えない限り難しい。 

少子化から抜け出しているフランスの事例を見ると、学校授業料などの負担はほどんどない上に、子供を持つことで、税負担は大幅に低減できるといった充実した子育て支援制度がある。その代わり、国民負担率は60%前後と非常に高く、半社会主義国といってもよい状態であり、その結果、労働コストは隣国ドイツより高くなっている。 少子化を防ぐには、高いコストが必要であることが分かる。
 
少子化問題の解決には、経済的な条件がネックになっていることは、「“欲しい子供の数”理想と現実、2人以上希望多数も「経済的に厳しい」」 を見ても分かるが、少子化問題を本当に解決しようとすれば、国民はかなりの負担をしなくてはならない。

日本の少子化は続く

しかし、先進国の経済成長全体が低い状態は、これから長期に渡って続くだろう。 日本も例外ではない。

少子化対策をしようにも、1000兆円にも上る、政府債務を考えると、いくら国民負担率を上げたからといって、フランスのような少子化対策が実行できるとは、とても考えれられない。従って、これからも少子化は続くだろう。 実際、国立社会保障・人口問題研究所の予測(2012年時点)によると、2060年には日本の総人口が約8670万人にまで減少しているが、出生率は1.35と低水準のまま回復しないという状況になっている。 少子化問題は解決しないと思われる。 

こうした事態が実際に起きれば、年金、健康保険といった社会保障制度は維持できない。これは賦課方式という世代間の仕送り方式か、積立方式かというテクニカルな問題もあるが、積立方式への移行、あるいは民営化といった方法をとっても、負担の総和は変化せず、本質的に何かが解決するというものではない。

社会保障の切り下げ、かなりの増税をするだけではなく、大量の移民を入れることなしには、社会が成り立たなくなるが、これは避けられないだろう。

これは、経済の低迷が続くであろう、先進国全般に言えることではないだろうか。

地球環境のために望まれる先進国の少子化

確かに、少子化は社会保障制度の維持という点では、困難をもたらすが、一方、地球環境という面から見ると、先進国の人口が減少することは、望ましいし、世界人口を減少させることなくして、人類の未来はない(「定員を超えた地球」  参照)。現在の70億人という世界人口は明らかに過大と考えられる。 特に二酸化炭素排出という面から見れば、多くのエネルギーを消費する先進国の人口が減少することが、真に望まれよう。実際一人当たり二酸化炭素排出量は、先進国が新興国に比較して圧倒的に多い。

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「世界と日本、二酸化炭素(CO2)排出量」 より

その意味で、先進国の人口が減少することは、地球環境の観点からは、望ましい。 如何に省エネルギーをしても、新興国の人々が徐々に豊かになる世界では、現在の先進国並みの生活水準を多くの人が維持することは、持続可能性の上から不可能になりつつあり、その結果、先進国で少子化が進むのであれば、それは、極めて合理的な人間の行動と言えるだろう。

一方、新興国も地球環境の悪化を食い止めることに協力する必要がある。 このためには、新興国の二酸化炭素排出量を抑制するための、先進国の技術支援が、極めて重要であるが、新興国の生活水準を上げ、ライフスタイルを変え、同時に先進国の生活水準を下げることが、新興国に於ける出生率の低下を促すことに繋がるだろう。 

それと同時に女性の自立を促したり、情報環境の整備により、新興国の出生率を抑制することでも出生率の低下を促すことが期待される(先進国のライフスタイルを見せるだけでも、大きな効果が得られると言われる)。  特に出生率の高い、アフリカ諸国に於ける、貧困と人口爆発の同時進行を止める必要がある。

先進国は物質的な生活水準を緩やかに下げながら、先進国は移民を受け入れ、世界経済の平準化を進めながら、先進国のみならず、世界全体の人口を緩やかに減少させてゆくことが、世界全体の安定化のために、真に望まれる。 なぜなら、資源、水、食糧をめぐる、国際的な緊張を増大させるより、それぞれの国の中での極端な格差による分断を解決するという、問題の細分化をする方が、私には、よりよい選択のように思われるからだ。 

先進国の低成長は、先進国の国民にとって、望ましいことではないかも知れないが、人類全体という観点からすると、望ましいことだと言えるだろう。 個人個人が経済成長を目指して努力するのはもちろんだが、それが実現しないことを嘆くのは誤りだ。 先進国、新興国を問わず、個人の努力、才能に見合った豊かさを享受できる世界にすることが、正しいと思うべきではないだろうか。人類は、最終的には、国という単位を解体することを目標にすべきだろう。

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