日本人の海外起業はなぜ少なくなったのか --- 岡本 裕明

2012年08月07日 07:00

日経新聞でふと目に止まった「起業、『老高若低』に」。日本国内では高齢者の起業者が増えているという記事のストーリーよりも若年層の起業者が激減している事実に私はむしろ驚いています。

1991年の20代までの日本国内の起業数に占める20代比率は15%近くあったのが、2011年には8.2%まで下がっています。まさに失われた20年の影響がこんなところにも出ていたということでしょうか?


ところで私はその失われた20年をそっくり海外で過ごしていますが、海外での起業についても実に憂慮すべき状況にあると見ています。例えばここバンクーバー。1996年は日本人の観光客が年間342000人も来ていましたが2011年は僅か107000人まで落ち込んでいます。観光客の減少は現地の日系ビジネスの衰退でもあります。

私の見ている限りここバンクーバーでこの5年、飲食業以外で起業し、個人事業レベルを超えて大きく育ちあがったところはほとんどないと思います(もしもどこかあるようでしたらご教示ください)。また、飲食系も増えてはいますが、資金ソースが限られており、チェーンや同一投資家による店舗数増加傾向が強くそのバックボーンは極めて脆弱であります。個人的に起業されている飲食店もそこそこありますが、どうしても大きく伸ばせない中、むしろ、1967年のカナダ移民法改正以降に移民されてきた方々が築き上げた日系ビジネス経営者が高齢化を迎え、毎年、加速度的にビジネスクロージャーが出ております。

この状態が進めば5年後のバンクーバーの日系ビジネスは壊滅的状況になる可能性があります。

国内では少子高齢化による若年労働者の不足が懸念されますが、まったく同じ発想で海外の日系ビジネスを考えたとき、それはもっと急速にそしてドラスティックな結果を生むことになりそうです。それを防ぐためには当然ながら若年層の起業の喚起とビジネスのハウツーを伝授していく仕組みが必要だと思うのですが、いまや、システマティックな起業塾をやるほど余裕もないというのが本音だと思います。

もう一つは日本国内でも言えることなのですが、起業そのものが圧倒的に難しくなったと思います。理由は

1. 大資本が圧倒的有利な状況が出来たこと。
2. ビジネスそのものが複雑になり販売の工夫も高いレベルの能力を求められること。これは起業者一人の力では補いきれない能力を要求されるということです。
3. 若年層に起業への夢が強く押し出されないこと。最近、公務員志願者が増えているという事実は安定志向がより鮮明になってきた表れだと思います。
4. 起業する資金の調達困難。

この辺りが主因ではないかと思います。

海外の日系起業家の減少は想像するに他国の主要都市でも同じ現象かと思います。もともと海外移住するのは日本では食べていけなかったというつらい過去が原点でした。その筋論からすれば日本での閉塞感を理由に海外で事業を打ちたてようする人が増えるべきなのですが、世の中がルールだらけでがんじがらめになってしまっているということには注目すべきかと思います。

複雑にしているのは海外でも日本でもネット社会の急速な浸透で今までは放置されていたような問題がことごとく表舞台にさらけ出され、それを規制するためにさまざまなルール作りが進んだと思います。それはビジネスのルールも同様で結果としてくもの巣のような網目をうまくかいくぐる能力が要求されるようになってしまいました。

私でも新しい事業を立ち上げるたびに「えっ、こんなルールが!」というのにぶち当たりめげそうになることがほとんどです。

海外においては若年起業者が少ないことで近い将来には海外起業事情は黄色信号から赤信号に変わっていきそうだといえそうです。大いに対策を考える必要があると思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年8月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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