地球温暖化のもたらすもの

2012年08月22日 09:36

ここのところ猛暑が続いているが、これは過去には考えられない暑さである。 実際、東京の夏の最高気温の平均は1990年代半ばまでは30℃を少し上回るくらいで推移していたが、2000年からは、最高気温の平均で33℃を超える年が目立ってきた。35℃を超える記録は近年になって(1990年以降)急増した現象で、気象庁は2007年に35℃以上の日を「猛暑日」と名付けた。それまでは25℃以上を「夏日」、30℃以上を「真夏日」と設定していただけである。 これは都市のヒートアイランド現象も関係していると思われるが、軽井沢のような都市化と無縁の場所でも最高気温の平均値は90年以前と比較して2℃前後上昇している。

このように顕在化してきた気候変動は、今後我々の生活にどのような、影響をもたらすのだろうか。


今年は世界的な旱魃の年

アメリカがここ50年で最悪の旱魃被害に見舞われている。 トウモロコシの8割が枯れ、アラスカとハワイを除く国土の3分の2が旱魃状態である。 今朝のニュースでは、ミシシッピ川の水位が過去最低を記録したそうだ。

トウモロコシ、大豆、小麦などの主要穀物の供給不足により、間もなく食料の流通価格が上がり、その状況が2014年ごろまで続くと予想されている。家畜の餌でもある穀物の価格が上昇すると、やがては食肉や乳製品の値段にも転嫁されるという。

実は、現在、旱魃の起こっているのは、アメリカだけではない。ロシア、ウクライナ、中国、インド、オーストラリア西部、ブラジル北東部、北朝鮮も旱魃である(日本総研のレポート「ブラジル北東部で大旱魃」「豪西部の旱魃」参照)。  

特にブラジル北東部はここ50年で最悪の旱魃で、川が干上がったところもあるようだ。

またオーストラリアは2008年にも大旱魃に見舞われ、一時的に穀物輸入国になったほどである。 今年の世界同時多発的旱魃だけでなく、世界的な自然の異変は最早明らかなように思われる。

旱魃のメカニズム

旱魃を引き起こすのは、降水量の減少と気温の上昇である。 降水量の減少が旱魃の原因になることは明らかだが、気温の上昇による旱魃のメカニズムは、

   気温の上昇⇒飽和水蒸気量の増加⇒湿度の低下⇒土壌の乾燥

で表される。 ここで注意すべきなのは、飽和水蒸気量は気温の上昇に伴って加速度的に増加することで、 具体的数値を見ると1立方メートルあたり、15℃:12.8g 20℃:17.2g, 25℃:23.0g, 30℃:30.3g, 35℃:39.6gというように急速に増加する。旱魃が夏に起こりやすいのは、このためである。 今回のアメリカ大旱魃でもコーンベルトの気温が平年に比べ2-5℃高くなっている。 

今年の世界的な旱魃の原因は、明確ではないが、やはり気候変動の影響はあると思われる。地球温暖化が進めば、間違いなく旱魃はひどくなるだろう。

気候変動による森林の荒廃

旱魃は単に食糧生産だけに影響するわけではない。
ナショナルジオグラフィックニュース

気温の上昇に旱魃が重なってキクイムシが大発生し、アラスカからメキシコに至る地域の何十億本もの針葉樹が、わずか数年で壊滅した。

高い気温でキクイムシの繁殖サイクルが促進され、冬を生き延びる個体も増える。一方、樹木は干ばつのストレスによって弱り、さまざまな脅威の影響を非常に受けやすくなっている。食欲旺盛なキクイムシも例外ではない

と伝えるように、気温上昇と旱魃は、森林の荒廃をもたらす。 上のニュースは衝撃的なものだ。 森林の荒廃のスピードの速さには驚きを感じる。

日本でも起きている森林の荒廃

気になるのは、日本でも規模はまだ小さいながら同じような現象が見られることである。それが ナラ枯れと呼ばれる現象で、カシノナガキクイムシというキクイムシの食害により、ナラ菌が媒介され、ミズナラなどのナラの木が枯死に至る現象である。 

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(上記、林野庁のホームページから転載)

このグラフが示すようにナラ枯れは加速度的に増加している。今のところ、ナラ枯れの被害は日本海側に集中しているが、これは、降雪量の減少と関係している可能性がある。

私は、毎年山に入っているので、森林の変化は肌で感じている。 一つの事例を紹介しよう。 2008年3月末に私は、長崎県対馬の白嶽に登ったが、これは通算5回目の訪問だった(いつも3月末に訪れている)。このとき驚いたのは、鬱蒼とした森林の様子こそ変わらなかったものの、かつては、ふかふかの腐葉土が足元にあったのに、その時足元にあったのは、カサカサした枯葉だったことだった。 こういった現象は、今日、日本全国で普遍的な変化のように思われる。 つまり、気温の上昇や冬の降雪の減少により、山全体が乾燥してきているようだ。

自然の変化は、地下水など様々なバッファがあるため目につきにくく、また、植生のようにゆっくりしか変化しないものも多いので注目されることは少ないが、気候変動の影響が、いよいよ顕在化してきたことを、ひしひしと感じている。

温暖化のもたらすもの

IPCCの予測によれば、今世紀中に3.0℃程度の気温上昇が予測されている。これは、非常に大きな値である。

これは、飽和水蒸気量の上昇と共に、地域差はあっても、全体としては、地表の水が大気に奪われることを意味する。 世界は、現在より格段に厳しい旱魃に見舞われることになるだろう。

いや、それ以上に、害虫の発生や実生木の減少により、森林の枯死や消滅を招き、地表が乾燥化、地下水位が低下し、さらにこれが森林の枯死を招くという悪循環に陥いる可能性が高まるだろう。 地下水位の低下や、地表の乾燥化、森林の消滅は、水資源の枯渇を招き、我々の生存を脅かすだろう。

近未来を予測した行動の必要性が増している。 我々に残された時間は少ない。

あとがき

「地球温暖化防止は人類の損失になる」にある池田先生のご意見:

地球温暖化についての錯覚は、原子力とよく似ています。重要なのは、地球環境ではなく人類の幸福を改善するためにどういう政策に予算を使うべきかです。幸福の尺度は目的関数に依存しますが、人命を基準にすると圧倒的に重要なのは感染症で、その次は水などの公衆衛生。この基準でみると、地球温暖化の優先順位は最低です。

には、私は賛同できない。あと10年から20年で、温暖化の影響は我々の生活を一変させるだろう。 このままでは、今世紀末までに人類は大きな存続の危機を迎える。

追記: アメリカの旱魃は、大量の水を使うシェールガスの採掘にも影響を及ぼしている。 このように気候変動の影響は多方面に及ぶ。

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