食糧生産と世界人口

2012年08月24日 12:17

このビデオはビル・ゲイツ氏が、二酸化炭素排出量削減のために、世界人口の抑制を訴える講演の一部である。 ビル・ゲイツ氏は、ワクチンの接種で子供の死亡率を減少させることで、10-15%程度の人口抑制が可能だと考えているようだ。

私も環境問題解決の鍵は、人口抑制だと考える。 今年はアメリカを始め世界各地で深刻な干ばつ被害が相次いでいるが、ここでは既に食糧生産の限界が近いことを概観し、人口抑制を訴えたい。


穀物生産に必要な水の量

日本の年間降水量は1600㎜程度であり、これは世界の平均降水量の3倍もある。 このため、日本人は水は無尽蔵にあると考えがちである。しかし、世界的に見て、利用可能な水資源は限られている。 

地球に存在する水の量はおよそ14億㎞3。そのうち97・5%が海水で、淡水は2・5%だが、淡水の多くは南極、北極に氷として存在し、その他はO・8%。さらに、そのO・8%のほとんどが地下水で、河川、湖沼などの水量はわずか0・01%に過ぎない。 世界の水利用の内訳は、農業用水に7割、工業用水に2割、生活用水に1割となっている。即ち、農業生産に水の大半を使っている。

コメ1トンを生産するのに水3600トン、トウモロコシ1トンを生産するのに水1900トン、小麦1トンを生産するのに水2000トンが必要とされる。このように膨大な水を使って穀物は生産されるため、アラル海の消失のような大規模な環境破壊が起きることもある。これは、乾燥地の開墾が持続的でないという事例として教訓的である。

十分な水資源を持続的に提供してくれる、良好な地球環境がなくては人類は生存できない。

乾燥地域が多い世界の穀倉地帯

ところが、世界の穀倉地帯は、必ずしも降水量に恵まれているわけではない。

アメリカの中西部の穀倉地帯の年間の降水量はおよそ300㎜から500㎜しかない。 元々は砂漠だったのを地下水を利用して灌漑し、農業を営んでいる。コーンベルトの地下には、オガララ水系という世界最大級の地下水脈が南北に走り、北はサウスダコタ州、南はテキサス州に至る8つの州がその水を利用している。 オガララ水系の地下水は数千年を掛けて蓄積されたもので、現在は、自然に補充される以上に農業用水として使っているため、地下水位の低下が著しい。 一部地域では、既に40フィート以上も地下水位が下がってしまったところがあり、資源量の90%を既に使い切ってしまった場所も出てきている。 

インドの巨大な人口を支える、穀倉地帯、北西部のパンジャブ地方は、年間の降水量は500㎜ほどしかなく、地下水の利用により農業を続けてきた。しかし、雨が降って蓄えられる涵養量を上まわって使用すれば井戸水は枯渇してしまう。 パンジャブ地方は今、深刻な地下水位の低下に直面し、さらに深い井戸を掘って農業用水を確保しなければならず、離農する農家も増えている。

ウクライナ、ロシアの南部の穀倉地帯も、年間の降水量は600㎜程度しかなく、実際に今年は干ばつに襲われている。

中国も乾燥地が多く、水不足は深刻だ。 

中国には北から順に海河、黄河、准河、長江(揚子江)という4つの大河が流れているが、水量が豊富なのは長江だけで、逆に黄河などでは水量が不足し、上流からの水が河口に届かない現象が起こっている。海河、黄河、准河の流域は降雨量が少ないことに加え、それらが流れる平原地帯は人口が密集し、農業生産も盛んで、生活用水、農業用水などのために水資源を過剰に使っている。さらに、長年、河川の水量不足を補うために地下水を汲み上げ続けたため、地盤沈下や生態系への影響も次々と報告されている。

アメリカの中西部やインドのパンジャブ地方の穀倉地帯などは地下水位の低下と共に、今後、砂漠化してゆくだろう。、地下水位の低下の度合いから考えて、それはそう遠いことではない。 農業の生産基盤を食い潰している状況であることは間違いない。

コメの単収も伸びが鈍化

一方コメについても単収(単位面積当たりの収穫量)について

1960 年代から70 年代の「緑の革命」の時代、世界の米単収は年率2%以上で伸びた(1965~75 年2.46%)。1975~85 年に伸び率は3.28%に達した。しかし、1985~95 年には一転して1.63%へ低下し、1995 年以降は1.25%から1%未満の水準にまで落ち込んでいる。なお、米の多収穫品種の開発に歴史的な貢献をした国際稲作研究所(IRRI、在フィリピンのロスバニョス市)の実験農場でも、1990年代後半の段階で70 年代の単収を下回る事態がすでに起きていたと伝えられている。(歯止めがかからないアジアの米単収増の低減! から引用)

と伝えられる。 今後、コメの増産を期待することには無理がある。

持続可能な世界人口はどの程度か?

以上のような事実から、我々の生存基盤は極めて脆弱である。穀物の作付面積は、ここ60年ほどほとんど増えていないことを見ても分かるように、最早、新しい農地の開拓は不可能で、現在のところ、化学肥料、品種改良による単収の増加に頼って、生産を伸ばしているのが現状である。 しかし、それも、もう限界に近い。

実際、穀物生産と人口の伸びを比較すると、危機は明白だ:

FoodPop

How tight is the link between oil, food and population? より引用)

このグラフから分かるように、最近は、穀物生産量の増加が人口増加に追いついていない。

今後、地球温暖化などの気候変動、地下水の枯渇に伴って、穀物生産が大幅に減少する可能性を考えれば、現在の70億という世界人口は、どう見積もっても過剰である。穀物生産が継続的に1-2割落ち込むだけで、億人単位の餓死者が出るだろう。

持続可能な世界人口は、今後、乾燥地の農業が行き詰まることを考えれば、いくら大きく見積もっても50億人以下で、将来的に地球温暖化の影響が激化することを考えれば、長期的には10億人以下に世界人口を抑制すべきだ(戦争が起きると予測する人もいるだろうが、戦争では何億という人は死なないので問題は少しも解決しない。人道上の問題だけでなく、この意味でも戦争は資源の浪費に過ぎない)。

具体的には、新興国の貧困問題の緩和や幼児の死亡率の減少策、人間の存在自体が地球環境に悪いという罪の意識を人類全体で共有する啓蒙活動が有効だろう。 

また高齢者が後進に道を譲るという観点から、慎重な国民的議論の下で、延命治療の打ち切りや、本人と家族の承認の下での安楽死の解禁など、過剰な長生きをしない工夫が求められよう。

(注)
今後の食糧生産に楽観的な
「21世紀における世界の食料生産」(川島博之) のような見解も存在するが、サブサハラを除いては窒素肥料は既にかなり使われており、上に挙げた単収の伸び悩みの事実に全く反しており、支持できない。

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