出口戦略を持たないスタートアップはスタートアップではない。

2012年09月01日 11:22

スタートアップとは、創業2-3年までの新興企業のことです。シリコンバレー用語といえるので、原則としてベンチャー企業、特にネットやバイオなどの急速に成長を続けている業界に関わる起業家たちの試みに限る呼び方です。

言葉というものは、正しく定義づけて使わなければならないと思います。起業家仲間の渡邉薫さんは「これからは英語とコンピュータープログラミングができなければ生きていけない時代になる」と公言されていますが、僕が思うに文章を書く行為は一種のプログラミングです。プログラムもきれいに書く人とそうでない人がいるし、表面的には同じ機能を再現できていてもソースの書き方は人によって違います。同じく、文章もまた、多少の誤りがあるかどうかはおいて、正しく書き手の意図が伝わることが大事です。

その過程でもっとも重要なのが、使う語句の意味がなるべく一義であることです。つまり、ここで僕が言いたいのは、ベンチャーとかスタートアップなどと言った場合、単に独立して自営している会社を指しているのではなく、非常に狭い範囲に限定される言葉である、ということなんです。例えば政府が「一万社起業」を目指して助成金をばらまくという話がありますが、それがイコール よいスタートアップを生むということにはならない、と僕は考えています。

スタートアップとは、創業2-3年までのベンチャー企業です。ベンチャーとは成長性の高い市場において数年以内のIPOを目指す、もしくはM&Aによるイグジットを目指すという出口戦略を持っている企業です。つまり、スタートアップの定義とは、IPOかM&Aなどの出口戦略に基づいて資金を調達し、急成長を目指す新興企業ということになります。

最近、TwitterやFacebookなどを通じて、プチ・ディベートのようなシチュエーションになることが多くなり(それ自体は良いことですが)、このスタートアップもしくはベンチャーの定義について、僕に対して異論を唱えてくる”友達”が相当数おられることに、僕としては少々驚きを感じています。出口戦略を持たない会社はベンチャーではないしスタートアップとは呼ばない。VCから投資してもらうときに交わす契約書のことを投資契約と言いますが、いついつまでにIPOを目指すこと、と明確に書いてあります。そうでなければ投資する意味が無く、投資を受ける側もゴールをどこに設定するか、つまり出口戦略を明示しなければVCからは投資を受けられない。そういう縛りがある新興企業がスタートアップです。出口戦略を持たない会社については、別の言い方をすればいい、そう思います。IPOあるいはM&Aを目指して起業することに対する、微妙な嫌悪感を口にする人が多いのは、もしかすると日本特有の社会問題かもなとさえ、最近僕は考えるようになりました。

日本の社会は、物事をはっきりさせず、曖昧なままに済ますことで適度な湿気と間隔を生み出していると思いますが、現在世界を席巻している企業はAppleにしてもSamsungにしても、強烈なリーダーシップとともに、出世や報酬の条件が非常に明確になっているカルチャーを備えたところばかりです。ただ一所懸命に仕事をするのではなく、目指すべき目的が設定された環境で仕事をすることで、彼らは結果を出しています。

独立自営を目指すことベンチャーの起業とは似て非なるものです。前者は一生好きな野球をやるよと言っているのに似ていますが、後者はプロになる、もしくはメジャーリーグを目指す、ということです。子の二つを分けるのは上昇志向に紐づくゴールの設定の有無です。つまり出口戦略があるかないかです。スタートアップを目指す学生が増えているのはいいことですが、起業することは入口であり、出口を強く意識してこそ最短距離を駆け抜けられると思います。それを周囲の環境がくさすことを言うのは良くない。今後は日本の社会でも、入口より出口について より深く論じるような文化に変えていかないとならないでしょう。

明治大学は、学生に対して、よりよい会社への就職を実現するというコミットを強めることでブランド価値向上を果たしました。大学に入るのは愉しいキャンパスライフを送るためでなく、いい大学に入れば就職に有利だからです。

逆に言えば、企業に良い人材を送り込むことを積極的に行い、それを成功させる大学こそがいい大学です。ならば、就職率が高く、よい企業に多く入れる、それがいい大学だと自らを定義づけるべきです。明治大学は、入学してくれる学生を集めるために、学生の出口を”就職”と考え、学生が正しい出口戦略を描ける手伝いをすることで、成功をおさめています。いわば大学はVCであり、学生は起業家の関係です。大学に入る意義を、単に勉学のためとか、円滑な人間関係を手に入れるためとか、豊かな人間性を育むためなどと、きれいごとを言っている人もいますが、それらはことごとくナンセンス。大学に入るのはよりよい就職を実現するため(起業も含む)、そう明確にしなければなりません。

そしてスタートアップはIPOかM&Aを目指すこと。それ以外の定義を言う人には、冷笑を送ってあげましょう。

小川浩@ogawakazuhiro

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑