視界不良の韓国

山口 巌

朝鮮日報が韓国経済近況に就いて伝える所では、今年の経済成長率2%台に、現代経済研が予測との事である。

現代経済研究院は2日、「最近の輸出急減による影響と対策」と題する報告書をまとめ、今年の輸出不振により、経済成長率が当初予想より1.4ポイント押し下げられるとする分析を示した。同研究院は「ほかの要素も含めると、今年の経済成長率は昨年時点で政府が示した4.5%をはるかに下回る2%台にとどまるのではないか」と予想した。知識経済部(省に相当)によると、今年1-8月の輸出は前年比1.6%減だった。昨年末には通年7.4%の伸びを予想していたが、正反対の状況となっている。研究所は「このまま推移すれば、今年通年の輸出の伸びは1.7%にとどまる。当初予想よりも国内総生産(GDP)が17兆1000億ウォン(約1兆1800億円)、雇用は28万1000人分が減少するとみられる」と指摘した。


韓国経済を牽引する「機関車」は無論の事「輸出」である。その頼みの「輸出」がこの様に土砂降り状態では、韓国国内の全ての歯車が狂ってしまう。

昨日のアゴラ記事、サムスン電子裁判結果に観る李明博大統領の終焉で説明した通り、「ウォン安」政策に依り三星グループ等の一部財閥は潤ったかも知らないが、一方、一般国民の収入は増えず、インフレが進行し結果窮乏化した。

同様に、三星グループ等の一部財閥に職を得る事に成功した国民と中小企業に勤める人間の格差は顕著である。

こう言う状況から、韓国国内家計信用の膨張は個人破産の連鎖が起こっても不思議ではない重篤な状況と聞いている。

更には、不動産投機ブーム、所謂バブルが終焉し嘗ての日本同様不良債権問題が顕在化すると言われている。体力の脆弱な金融機関がこの直撃に耐えるのは極めて困難との事である。

韓国経済や韓国社会はこの種の重荷を背負いながらも、輸出を拡大する事で何とか遣り繰りし、結果ここまで凌いできた訳である。

韓国経済、韓国社会に取って輸出の停滞や減少は、走っている自転車の急な停止や、回転する独楽の停止同様、結果は倒れる事でしかないのではと推測する。

知識経済部は1日、8月の輸出が前年同月比6.2%減の429億7000万ドルだったと発表した。輸入は9.8%減の409億3000万ドルで、貿易収支は20億4000万ドルの黒字だったが、輸出よりも輸入の減少幅が大きい不況型黒字が続いた。黒字幅も前月(27億5000万ドル)を下回った。

8月の輸入が前年同月比9.8%減と言うのが衝撃的である。製品在庫が溜まり、工場の稼働調整をしているに違いない。当然、部品や原材料の輸入は激減する。工場の新設や拡張は延期されるので、生産資材の輸入も減る。

この状態が長期化すれば、企業は雇用調整を伴う工場閉鎖に着手する事になる。輸出不振と言う経済問題が、「失業」と言う社会問題に転換する瞬間である。

問題打開の為には韓国は輸出を増やす以外の手段を持ち合わさないであろう。そして、それは果たして可能なのか?

先ず、世界の物流の推移を俯瞰するにはバルチック指数を観るべきであろう。一月以降右肩下がりのトレンドであるが、矢張り八月の下がりが顕著である。このチャートを見る限りV字反転の可能性は感じられない。

次いで地域別輸出の可能性に就いて検証してみる。

先ず、今年になって落ち込みが顕著な欧州であるが、今朝のBBC記事、Eurozone manufacturing PMI falls again in August を読む限り、お先真っ暗と言うしかない。何より、ここに来ての欧州経済牽引役のドイツ経済の失速が痛い。

Within the eurozone, the traditionally stronger countries of Germany and France failed to provide support to the weak ones.Germany’s PMI read 44.7 in August, its sixth monthly fall in a row.

こう言う時に頼りにしたくなるのは中国市場であろう。しかしながら、China’s Rail Cargo Volumes Are Divingを読む限り、8月に入っての鉄道輸送の落ち込みが酷い。

旧正月の様な季節要因を別にすれば、リーマンショックを例外とすれば、こんな大きな単月下落は鄧小平により、改革開放政策が採用されて初めての経験ではないか?

対中輸出は年末に向かい更に落ち込むと観るべきであろう。

こう言う状況なら、潜在能力の高いアメリカ市場に輸出のドライブをかけたい所である。しかしながら、アメリカに就いては、サムスン電子、コーロンと知財関連裁判で連敗し、多分今後も当分の間負け続ける事になるであろう。とても輸出を伸ばす所ではない。

最後は日本市場である。韓国経済がかかる状態であれば、本来韓国政府は通商に軸足を置くべきと思うのであるが、何と!、元慰安婦への謝罪と賠償要求=竹島の領有権主張撤回を―韓国国会が決議との事である。

相変わらず日本に喧嘩を売っているのである。喧嘩を売るのではなく、滞留し不良在庫になろうとしている韓国製品を売るべきと思うのであるが。

世界市場を鳥瞰して、韓国の前途に全く光明は見えて来ない。

韓国の事であるから、苦しく成れば日本に言い掛かりを付け金の支払いを要求するのであろう。しかしながら、日本政府はきっぱりと拒絶すべきである。そして、これを好機と捉え、日韓の外交関係を正常化すべきである。

万事事なかれ主義の外務省は、非常識極りの無い韓国政府要求に屁理屈を捏ね回して何とか日本政府に飲ませようとするであろう。しかしながら、同様、日本外交オーバーホールの好機 と捉え、外務省改革を断行すべきと思う。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役