エネルギー生産と水資源

2012年09月05日 08:30

水、食料、エネルギーの三つが、人間の生存に欠かせない三要素です。

このうち、水資源は極めて限られており、淡水資源の大部分を占める地下水の枯渇や、「水資源の今後」に書いたように、森林の保水力の低下が懸念されるところです。 

また、食料生産については、「食糧生産と世界人口」に書いたように、穀物生産の増加は今後はあまり期待できず、地下水位の低下、気候変動による干ばつや洪水による減収が懸念される上、ここ20年ほどは、人口増加率>穀物生産増加率 という傾向が続いています。

一方、エネルギーについては、石油の枯渇は心配されているものの、シェールガスの採掘方法が確立され、当面問題がなさそうに見えますが、本当にそうでしょうか?

ここでは、エネルギー生産も、実は豊かな水資源がなくては成り立たず、気候変動の脅威にさらされていることを指摘したいと思います。


アメリカの干ばつが浮き彫りにした水資源とエネルギーの関係

今年のアメリカの大干ばつは、トウモロコシ、大豆といった農業生産に甚大な被害をもたらしましたが、その一方で、エネルギー生産にも大きな影響を及ぼしました。

東海岸のコネティカット州から西海岸のカリフォルニア州に至るまで、干ばつによる水不足に加えて冷却用水の温度が猛暑で急上昇。数多くの原子力発電所が電力生産量の減少を余儀なくされている。冷却水の水温規制値に関して、適用除外の特例を求めるケースも出ているという。(中略)

テキサス大学オースティン校国際エネルギー・環境政策センターのマイケル・ウェバー(Michael Webber)氏は、「猛暑と干ばつが組み合わさって、電力網が受けるダメージが増大した」と指摘する。「電力生産では、水は一般に考えられているよりはるかに重要な資源だ。家庭で消費するより、家庭用の電気を生み出すために使われる量の方が多い」。

熱波で1万人以上の死者を出した2003年のヨーロッパでも、冷却水用の川の水温が高くなりすぎて、稼働レベルを下げる原発が相次いだ。「今夏のアメリカは何とか乗り切っているが、電力不足に陥る夏がいずれ来るだろう」とウェバー氏は語る。実際に冷却水源の水位が取水管の位置よりも低くなったために、操業を停止した発電所も出ている。

「アメリカ、猛暑と干ばつで原発停止」から抜粋)

さらにカリフォルニア州では冬の降雪不足から水力発電の出力が低下しています。 シエラネバダの雪はカリフォルニアの電源なのです。

シェールガスと水資源

また、今回の干ばつの注目すべき影響として、シェールガスの採掘にも影響が出ています:

アメリカ、ペンシルバニア州ブラッドフォード郡で、埋蔵天然ガスの水圧破砕(フラッキング)作業を行う採掘業者。干ばつの影響で河川の水量や地下水位が低下し、同州の多くの地域ではフラッキングの水使用が停止されている。取水停止措置がとられたのは、サスケハナ川流域のペンシルバニア州13郡とニューヨーク州1郡。2008年6月にフラッキング用の取水が許可されて以来、最も厳しい制限だという。フラッキング1回あたり、約1万5000キロリットルの水と複数の化学物質が消費される。

「シェールガスに暗雲、米国干ばつの影響」より)

つまり、シェールガスの採掘には極めて大量の水(1万5000キロリットルの水は、普通の25メートルプール約50杯分に相当します)が必要であり、そのために気候変動の影響を受けるということです。 さらに、シェールガスの掘削により、メタンが大気に放出され、さらに温暖化を加速する可能性も指摘されています(メタンの温室効果は二酸化炭素の21倍から72倍とされる)。

異常気象は続くのか

このようにエネルギー生産にも気候変動の影響が出てきているわけですが、今年のアメリカの干ばつのような異常気象は今後も続くのでしょうか? これについて、NASAの気象学者ハンセン氏は統計的手法を用いて次のような研究をおこなっています: 

◆異常な熱波の発生確率が上昇

ハンセン氏のチームは60年分の地球全体の気温データを分析し、夏の異常気温の発生数が、「3シグマ」という標準分布を越えて増加していることを突き止めた。このレベルの異常は、温暖化がなければ、熱波1000回のうち2回ほどしか発生しないという。

 しかしハンセン氏は、「オクラホマ州、テキサス州、メキシコ北部を襲った2011年の熱波と、2010年のモスクワ、そして現在のアメリカ中西部で発生している猛烈な熱波も、このレベルに該当する」と言う。

 かつては非常に稀で、温暖化の兆候が現れる前の1951~1980年の期間には、この種の異常高温に見舞われる地域は地球上の0.1%に留まっていた。ところが過去30年間で範囲は10%に広まっており、今後10年間で17%に拡大するとみられている。

「自然発生の可能性はきわめて低い。それでも温暖化とは関係がないと言い張るのは、仕事をやめて宝くじで生計を立てるのと同じくらい無謀だろう」とハンセン氏は話している。

今回の研究は「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌で8月6日に発表された。

「熱波や干ばつ、原因は地球温暖化」から抜粋)

地球温暖化には根強い懐疑論がありますが、上の記事に

温暖化の実態を調査したバークレー地表温度プロジェクト(Berkeley Earth Surface Temperature)の共同設立者リチャード・ミュラー(Richard Muller)も、同様の結論に至っている。同氏は温暖化の影響について懐疑的だったが、7月後半に「New York Times」紙に掲載された論説欄で持論を転換、「気温の上昇はすべて温室効果ガスの排出に起因しているようだ」と述べている。

とあるように温暖化は起きており、それは人為的なものでしょう。 実際、ヒートアイランド現象の影響を受けない海水温が上昇しています。例えば、北太平洋の近年のグラフは次のように上昇傾向です。
avesst_npac_1

また気象庁はここ100年の日本近海の海水温について次のように報告しています。

日本海北東部を除く日本近海における、2011年までのおよそ100年間にわたる海域平均海面水温(年平均)の上昇率は、+0.61~+1.73℃/100年です。 これらの上昇率は、世界全体で平均した海面水温の上昇率(+0.51℃/100年)よりも大きな値です。
黄海、東シナ海、日本海南部、四国・東海沖北部では日本の気温の上昇率(+1.15℃/100年)と同程度となっています。

(「海面水温の長期変化傾向(日本近海)より)

このため、南方系のゴマサバの漁獲量が増えたり、本州沿岸に熱帯性の魚クマノミが生息し始めるなど、海の生態系が変化しています。

最近、下のグラフのとおり、豪雨の頻度が増していますが(統計的に90%有意)、
80heavyrain2011

これも海水温の上昇による水蒸気量の増加が大きな原因と考えられています。 ハンセン氏の言うとおり、温暖化は起きており、これが異常気象の大きな原因と考えて間違いないでしょう。 

比熱の大きな海水の温度がここまで上昇している状況では、我々は今後、気候変動による異常気象を受け入れつつ、気候変動を何とか食い止める方法を考えなければならないでしょう。 私は、今世紀中の大幅な人口減少の達成が必要だと考えています。 

(注)石炭から天然ガスへの転換でも温暖化の抑止効果は限定的だという研究結果があります:天然ガス転換は温暖化対策に不十分? 私はトリウム溶融塩型原子炉に期待しています。

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