カントリーリスクに果敢に立ち向かえ --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

中国のiPhone工場のひとつで大規模な暴動が起き、日経では死傷者がでた模様と報道されてます。この工場はシャープとのビジネスで日本でも名が知れた鴻海の子会社フォックスコンの工場であり、同社の中国工場では過去もしばしば問題は生じていました。

しかし、今回はフル生産をしても追いつかないほどの予約が入っているiPhone5の生産拠点だけにこの暴動は直接的ロスよりも長期的視野からその衝撃は今後大きなものになると思います。


原因そのものが警備員と一部従業員のいざこざとされていますが、それが大規模で死者も出すような事態になることは日本人には想像しがたいものがあると思います。

しかし、中国の歴史を紐解けばこんな事は日常茶飯事であり、これを知ってか知らぬか、23000社も日本から中国に進出しているということはある意味、大きなビジネスリスクを抱えているということであります。

1966年、毛沢東が文化大革命を主導したとき、どうなったか、日本では案外知られていないのではないでしょうか?事実、あの暗黒の約10年は中国政府が封印していたこともあり、事実関係について断片的には様々な本が出ていますが、全体像としてどうだったのか、よく分かりにくい部分も多いのです。

その際に紅衛兵と称する学生や労働者が毛沢東主義を啓蒙し一種の原理主義的行動に進み結果として数百万人から数千万人もの死者、或いは1億人にも上る被害者を出した過激な運動となったのです。中国では大衆の力による暴動がすさまじいパワーを生み出すケースが多く、1989年の六四天安門事件でも同様でした。

中国人が何故にしてこのような行動に出やすいかは専門の方の意見を改めて聞いてみたいと思いますが、一つには国民が「刺激を求めている」部分が大きい気がいたします。よって、ほとんどのメディアで日中関係を懸念する声が主流でしたが、私はそれに留まらず今後、外資が一斉に攻撃対象になる可能性も秘めていると思います。それは文革のときの紅衛兵の動きがまさに拡大解釈による自己正当化であったところにそのバックグラウンドを見出すことが出来るのではないでしょうか?

9月25日付の日経ビジネスの電子版では企業対策としてバックアッププランの策定を急ぐべきとあります。私もそれは正しいと思います。

日本企業は13億人のマーケットということで余りにもリスクを省みず、「みんなで渡れば怖くない」という気持ちになりすぎた気がいたします。大いに反省すべき点でしょう。海外は甘くないのです。それは20年北米でビジネスをしてきた人間として自信を持っていえることなのです。

振り戻し効果として日本回帰の動きも今後確実に出てくるでしょう。それは各企業の判断です。但し、誤解してもらいたくないのですが、海外は甘くないといっているだけでそれを乗り越えて頑張っていく企業は今後ともどんどん頑張っていただきたいということです。どんな逆境にも試練にも耐え、現地化を進めることが出来る企業だけが生き残れると思います。

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年9月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。