挑戦を許す国と許さない国

山田 肇

カリフォルニア州のブラウン知事は、9月25日、グーグルが開発中の自動走行自動車が公道で走行試験するのを認める法案に署名した。これには高速道路での走行試験も含まれる。ネバダ州とフロリダ州に続く3番目の決定である。知事は「サイエンスフィクションが現実化される瞬間を、今日、目撃している」と署名式で演説した。アメリカは挑戦に寛容だとつくづく思う。

WSJ記事の最後の部分には驚かされた。ほとんどの州で自動走行は禁止されているが、2010年秋に正式に挑戦を発表する前に、10万マイル以上の公道自動走行試験を密かに実施していたと、グーグル社員が語っているのだ。日本でこんなことを話したら法律違反が糾弾されるに違いない。


わが国ではスマートフォンで外出先からエアコンをOn/Offさせることすらできない。遠隔操作でOn/Offしても危険のない家電製品として、電気用品安全法技術基準技術基準にエアコンが例示されていなかったので、経済産業省が問題と指摘したという。

この彼我の差が日本産業衰退の一因である。法律違反の試験を密かに先行実施し、実績で法律の側を改正させてしまうアメリカ。省令を御旗にして、わずかな機能追加すら許さない日本。感電や火災の危険を避けるというのが技術基準の理由だそうだが、照明器具やラジオよりエアコンはどれほど危険なのだろうか。単に技術基準を作成するとき、想定していなかっただけではないか。

法律違反の自動走行試験は危険なことだが、グーグルはそのリスクを取って試験をしていた。日本も、企業が自らリスクを取るのを認める方向に転じないと、産業はさらに衰退していくだけだ。

山田 肇 -東洋大学経済学部-