日本企業に求められる垂直統合ビジネスの新しい発想 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

このところ、タブレットに関するメディアの注目度が非常に高まっています。アップルは次期iPadの開発中だとされますし、このところ新たに出たメジャーなタブレットはアマゾンのキンドルファイヤー、グーグルのネクサス7、更にはマイクロソフトもタブレット仕様となるウィンドウズ8を発売します。国内では楽天のコボも販売され始めています。


このタブレット戦争で気がつくことはいわゆるメーカー主導の開発からソフトや販売会社が自社ビジネスを推進する為のタブレット開発に移行しつつあることが見て取れます。いわゆる垂直型と称されるこのビジネスモデルは日本では最近シャープがその失敗例として挙げられていますが、シャープとタブレット開発に於ける垂直モデルの違いは製造業内での垂直か、販売に強みがあった会社が垂直モデルで利益の囲い込みをしているか、ということであります。

製造業内の垂直型ビジネスは主に製造コストの削減と製造過程のブラックボックス化による技術流出の防止と市場占有率の確保という事かと思います。一方、販売会社が垂直化させることは自社製品、販売商品の販促、囲い込みを主眼としている点において大きな違いがあると考えられます。

アマゾンのベゾス会長は初代キンドルから今回のキンドルファイアーに至るまで一貫して「アマゾンはこのディバイスで儲けるのではなく、このディバイスを通じて儲けるのだ」と断言しています。ここが垂直モデルの大きな特徴であり、それはタブレットの価格にも出ているわけです。楽天のコボも価格が安いのは同じ発想でしょう。

この垂直モデルは私の会社の経営でも取り込んでいます。例えば、カフェ部門の大家は当社のグループ会社。この理由は不動産所有しているグループ会社は安定した家賃(しかも他のテナントと同水準の賃料)で家賃確保が可能です。これによりカフェの経営部門はキャッシュフロー赤字にならなければ全体としてプラスに推移することになります。

もう一つ、レンタカー部門も同じです。当社のグループ会社で所有する駐車場施設が満車ではない為、稼働率向上のため、レンタカーを月極契約します。ここで不動産部門は月極契約を通じて売上げが向上することがボトムラインになります。更にレンタカー経営部門もキャッシュフローが廻ればこれもプラスに推移するのです。

垂直ビジネス統合モデルの場合、その断面において何処で儲け、何処はマーケティングかというメリハリをつけることで強みを発揮するということではないでしょうか?

日本企業の場合、製造業とサービス業に明白なラインが敷かれています。例えば携帯電話は事業会社であるドコモやソフトバンクが内外の携帯電話メーカーにそれぞれの携帯事業会社仕様の電話を作らせているわけです。

では、ソフトバンクやauが直接携帯を作るという発想は出来ないのでしょうか?ドコモが携帯ゲーム事業に参入すると先週発表しましたがこれはその垣根の一部を破るという点で評価できると思います。また、サムスンは携帯会社やITソフトの会社が欲しいのでは、といわれています。

日本はモノづくり専業から「モノを使って何を売るか」という発展的発想が必要な時代になってきたのではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年10月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。