最近の風俗問題を考えてみる(2) --- 木曽 崇

2012年10月06日 17:49

しつこいようですが、タイトルを見てエロ系の話題を期待して来た人は、歯軋りしながら悔しがったら良いと思うよ。ここでいう風俗問題とは、現在巷で多数発生している「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(通称:風適法)に関連する事案のことです。

前の投稿はコチラから。
 ・ 最近の風俗問題を考えてみる(1)

さて、続きです。風適法を語るときに生じる最大の「勘違い」は、それがあたかも様々な風俗営業種を禁止もしくは取締まりの対象としているかの様に勘違いしてしまうことにあります。もし、未だそのような壮大な勘違いをしている人が居るのだとすれば、PCモニターの前に正座して風適法の正式名称「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」を声に出して10回唱えてから出直してきてください。


この法律はその名が示すとおり、各種風俗営業を「適正化」することが目的であり、禁止する事も、取締まる事も目的としていないのです。

この点に関しては、現在の風適法(1984年改正法)の企画・立案を直接担当した警察官僚OB・関根謙一氏(警察大学校名誉教授)が監修を勤めた風適法の解説本「実務風適法」に、当時の経緯が以下のように説明されています。

[風俗営業]
まず、思想の転換を図って、風俗営業に該当する営業については、「国民に社交の場と娯楽と憩いの機会を提供する社会的に有意義な営業」であり、料亭(料理店)のように、民族文化として保護されてしかるべき営業である、との前提に立って、従来の取締りの対象としての営業から、営業の健全化の理念の下に、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずるべき対象としての営業と構成することとした。
(実務風適法, 監修:関根謙一 著:鈴木剛夫, pg 2)

このことは、風適法の成り立ちにとって非常に重要な事なのですが、同時に勘違いも多い部分。現在、クラブ業界の救済を目的に組織されているLet’s Dance署名推進委員会などが、何を間違ったのか風適法を「ダンス規正法」などと読み替えて、「公権力による文化侵害からダンスを守れ」的な珍妙なるシュプレヒコールを挙げていることなどはその象徴とも言えるでしょう。私としては、かなり早い時期から「いやいや、風適法はあくまで業界の適正化を目指す法律であって…」と申し上げてはいるのですが、もはや聞く耳も持たない、というより判っててあえて我が道を行っているのでしょう。

判っていながら「運動拡大のために、あえて誤謬を広める」というやり方は、現在の一部の反原発活動家にも通ずるところがあり、私としてはその手法論に1ミリたりとも賛同できないのですが、「現状を変えたい」という気持ちの部分だけは受け取っておきます。但し、そのうち「しっぺ返し」を喰らうこと請け合いです。…と思っていた矢先に、法改正に向けて協力を仰がなければならぬ議員さんあたりからは、すでに「オマエら、それ違わねぇか?」などと直球の指摘が出始めており、私としては「あーぁ、言わんこっちゃない」と傍観しているところであります。
(ちなみに Let’s Danceでは10万人を目指して署名を募集中です。現在、約7万7千筆。ご興味のある方は、是非協力してあげて下さい)

但し、あえてもう一点この誤解に関連して申し上げるのならば、1984年の改正風適法に直接、もしくは間接的に関った警察OBに対して私が過去に行なったヒアリングの中では、現在の警察行政の担い手である現役警察官僚に対しても、「当時の法制定の基本精神を忘れ、抑制的な法の運用に走りすぎているのではないか」という疑問の声も存在することだけはここに特記しておきましょう。すなわち、法の下で生活する我々国民も、そしてそれを運用する官僚側も、風適法の根底に流れる「設立の精神」はキッチリと尊重しなければならない。

大切なことは何度でも繰り返させて頂くならば、

風俗営業は、国民に社交の場と娯楽と憩いの機会を提供する社会的に有意義な営業であり、民族文化として保護されてしかるべき営業。その前提に立って、営業の健全化の理念の下に業務の適正化を促進することが重要である

という事であり、私の言説は常にこの立場から発されるものであります。

つづく
木曽 崇
国際カジノ研究所 所長

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