中央銀行の政策について整理する 番外編 日銀の外債購入

小幡 績

ナンセンスだ。

池田氏の記事はわかりやすくて素晴らしいが、補足と、わかりにくさを犠牲にしても事実を簡素に記述しておきたい。

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日銀の外債購入が日本経済にプラスにならないのは池田氏の議論の通りである。

ポイントを整理しよう。


1.外債購入の一つの狙いは実質的な為替介入(円安誘導)であるが、為替介入は極端な投機が起きているときに限り一時的な効果としては期待できるが、それ以外においては、無意味であるか、日本経済にマイナスの影響を与える。

今回のIMF世銀総会で城島財務大臣が円高について理解を求めたかどうか、政治メディアの一部で議論しているが、それはナンセンスで、こんな欧州危機の議論をしているときに、自分の庭先の話を強引にねじ込もうとしたら、それは馬鹿か無責任で自分のことしか考えないやつということになり、今後、国際会議、交渉において、軽蔑され、頭の悪い国の代表者として臨まなければならなくなるから、大きくマイナスだ。

同じように、円売り介入をしたがる当局は基本的には馬鹿にされる。なめられる。だから長期的には組みやすい投機対象として狙われやすくなる。つまり円売り介入を催促するような仕掛けがやりやすくなるのだ。

唯一効果があるのは、あほだと思われていることを利用して、日本の当局はいつ邪道な円売り介入をするかわからない、合理的でないから読めなくて怖い、というイメージを作り上げることだが、これは相当な高等戦術で、現実には、介入は排除しない、という現在のスタンスを維持するにとどまるだろう。やるときは榊原氏のように一気に度肝を抜くほど勝ちきるまでやらないといけない。それも20年に一回ぐらいだろう。

為替レートは基本的に米ドルと欧州ユーロの動きで現在は決まっており、円はマイナー通貨だから、円がじたばたしたところで大勢はすでに決している。今の78円前後で推移することを受け入れる以外にない。

2.マネーの量を増やすことで経済にプラスになることはほとんどなく、現在の日本経済においてもその原則は当てはまる。

中央銀行がベースマネーを増やしても、要は現金を増やしたり、日銀への当座預金の残高を増やしても、あるいはコール市場におけるマネーを増やしても、それ自体は効果が無い。これは真の意味での量的緩和を行った日銀によって21世紀初頭に示されている。ベースマネーの拡大が広義のマネーの増加につながらないことこそが日銀の怠慢、能力不足だ、というのがリフレ派などの日銀批判論者の意見であるが、そうなると、マネーを増やすこと自体はどうでもよく、広義のマネーの増加が意味するもの、民間経済主体の借り入れを増加させればいいことになる。しかし、これは経済においては、ほとんどの場合プラスではない。

(続)